全国有数の竹林面積を誇る九州・山口で、竹を加工して製品開発に生かす動きが広がっている。SDGs(持続可能な開発目標)の観点から自然素材としての価値が見直されているためだ。竹は成長が早いことから放置すれば土砂災害などの恐れもあり、社会課題の解決に貢献できることも企業を後押ししている。(姫野陽平)
「高品質の飼料、肥料を生産でき、放置竹林対策にもなる。一石二鳥だ」
宮崎県都城市で家畜用飼料や肥料を製造する大和フロンティアの田中浩一郎社長は、同市内で稼働する工場の前で力を込める。
同社の製品の原料となっているのが、宮崎、鹿児島県内で伐採された竹だ。粉砕機で粉々にし、糖蜜を混ぜるなどの工程を経れば完成する。宮崎県畜産試験場の技術を実用化し、「 サイレージ」と名付けた。「一般的な飼料に比べ、乳酸菌などが豊富」と田中社長は胸を張る。
農家らへの販売を始めたのは2016年だが、ロシアのウクライナ侵略や円安などで輸入飼料の価格が高騰し、比較的安価な同社製品の引き合いが増加。今年5月に同県新富町に工場を新設した。竹の受け入れ量は同社全体で月700トンに上る見通しで、今後は竹の調達エリアや販路の拡大を一段と進めたい考えだ。
日常生活に身近な製品をつくる企業もある。製紙大手の中越パルプ工業(東京)は、鹿児島県薩摩川内市の工場で国産の竹を使った紙を生産する。ノートや名刺などに利用され、使う竹は年約1万トンに上る。「SDGsの意識の高まりで問い合わせが増えている」という。エシカルバンブー(山口県防府市)は、竹炭の洗剤や、竹の繊維を活用したタオルを製造して国内外で販売する。
竹は温暖な気候で育つため、九州・山口に多い。林野庁によると、国内の竹林面積は16・7万ヘクタールで、都道府県別では鹿児島が1・8万ヘクタールで最も大きく、大分、福岡、山口と続く。
面積は増加傾向の一方、家具や割り箸などに加工されてきた竹の消費量は、プラスチック製品の普及などに伴って減少している。
竹は1日で1メートル以上成長することもあり、伐採されずに放置されることで起きるのが、「竹害」と呼ばれる問題だ。地中の養分を奪い、日光を遮ることで周囲の植物の成長を妨げる。根が浅いため、斜面地の竹林の場合は、長雨が続くと土砂崩れなどにつながる危険性もある。
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