企画、キャスティング、撮影、編集……たくさんの人の力をつないで完成を目指していく広告。
スタートからゴールに向かうまで、どんな気持ちで取り組んでいるのか?そこにはどんなドラマがあるのか?広告に託した思いをもっと知りたいという一心で、出演者の方や、つくり手の方に、コピーライターの阿部広太郎氏がお話を伺っていく、電通キャスティングアンドエンタテイメント発の連載企画「広告のtasuki」。
第2回は俳優の長澤まさみさんにご登場いただき、「広告」をテーマに語っていただきました。
CM撮影では力の全てを使い果たします
阿部:今日は広告についての話を伺いたいのですが、長澤さんは、広告の仕事をどういうふうに捉えられていらっしゃいますか?
長澤:実は、好きなお仕事の中の一つが広告なんですよ。CM撮影はいつも楽しみです。
阿部:それはうれしいです。ちなみにどういうところが好きなんですか?
長澤:いくつかありますが、まず、CMの現場は1日に撮影する量がすごく多いですよね。いろんなお仕事の現場を経験させていただいていますが、1日の疲労度はたぶん一番。力を全て使い果たすので“やり切った感”は当然ありますね(笑)。
阿部:1日に撮影するカット数も厳密に決まっていますよね。しかも最近は、SNSやウェブ用の撮影も合間にするので、昔と比べてその日に撮るものが多くなっていますから。
長澤:いつも思うんですけど、1日のスケジュールを作った人はすごいですよね。あんな緻密な香盤表をよく作れますよね。天才だな~って!
阿部:撮影は、一度始まってしまうともう止まらないですもんね。いろんな制限の中で撮影を成立させてしまうので、あれはまさに職人技なんだと思います。
長澤:しかも現場によっては当日にトラブルが起きないように、前日に代役を立てて全く同じ撮影をすることもありますよね。香盤表通りにちゃんとできるかの確認を。あの仕組みを知った時、広告の現場の苦労に触れた気がしました。子どもの頃は何も知らずにCMを観ていましたが、大人になって裏側の努力を知ると、なんかこう自分が任せられている責任を強く感じますね。
阿部:現場に関わった人たちからのバトンを託されている気がしますか?
長澤:はい、バトンの重みをズッシリと感じますね。しっかりやらなくちゃ、って!
ちなみに私、CMを早送りとかはしないんです
阿部:長澤さんが最近気になっている広告やCMはありますか?
長澤:ここ数年で言えば、やっぱり瑛太くんと山田孝之くん、あの二人が出演しているCMは面白いですよね。好きだな~。二人のキャラクターも良いんですけど、何よりも世界観を感じる。どういう監督さんが作っているのか、つい気になっちゃいますね。
阿部:出演者だけでなく、監督もなんですね。
長澤:もちろん、気になりますよ! 昔、あるCM監督さんと一緒にお仕事をさせていただいて、「クリエイターってすごいな」って本当に思い知らされました。それがきっかけなのか、私が演じる世界は、ドラマや映画だけではないと考えるようになったんです。
阿部:つまり、ドラマや映画と同じようにCMも捉えているということですか?
長澤:そうですね。ちなみに私、CMを早送りとかはしないんですよ。マネージャーさんたちともよく「あのCMは面白いよね~」とか、話していますし。やっぱり私は役者なので、CMを作品として捉えているんですよね。もちろん、広告としての役割や影響力、世の中にどういう印象をもたらすのかは本当に興味深いんですよ。……ですけど、一人の役者としては、面白い作品を作りたい、という想いの方が強いですね。
私の想像を超えた作品に仕上がってくる
阿部:CMが企画されて完成するまでにさまざまなプロセスがあるのですが、長澤さんが一番うれしさを感じるのはどのポイントですか?
長澤:やっぱり出来上がりを観た時ですね。編集がある程度終わって、マネージャーさんから観させてもらった時が、 一番楽しみで一番うれしい瞬間でもあります。
阿部:長澤さんはコンテもしっかりと見ますか?
長澤:見ますね。これはCMの現場を経験したことがある人なら分かるかと思いますが、絵コンテって、絵の印象が強いじゃないですか。絵が上手い人もいれば、逆に……。
阿部:います、います。癖が強い方も。
長澤:絵コンテの段階だと想像することができなくても、現場に行ってセットを見たら、自分のイメージを飛び越えることが多いんですよね。「これなら絶対に面白いものになる!」って感動します。照明さん、撮影さん、編集さん、いろんな人たちが関わることで、私の想像を超えた作品に仕上がっていくのが楽しいですね。
阿部:たった15秒のCMかもしれませんが、そのためにたくさんのスタッフが力を出し合っていますからね。
長澤:現場にはいろんな才能を持った人がいるので、私としては、もっと接してみたいんですよね。良いものを作るために、議論とか意見交換をもっとしたい。同じ作品を作る仲間として、そこに垣根はないですから!
いろんな人の感情や想いを栄養にさせていただく
阿部:ご自身が出演した広告で、印象に残っているものはありますか? 長澤さんは数々の広告に出演されているので、その中から選ぶのは大変だと思いつつ伺えたらうれしいです。
長澤:そうですね。どれも本当に印象深いので選ぶのはとても難しいのですが、長くやらせていただいている広告の一つは『カルピス』ですね。たまに撮影現場とかで、私と共演したらカルピスがもらえるんじゃないかって思っている役者さんがいて、現場で「カルピス頂戴!」とか言われるんです(笑)。
阿部:たしか、10年以上やられていますよね。そのイメージは皆さんに定着されていると思いますよ。
長澤:商品のイメージを託されて、周りから「私=カルピス」という印象を持ってもらっていることは、かなりうれしいかもしれない!
阿部:ほかに、CMの現場などで印象に残っていることはありますか?
長澤:最近思っていることは、愛社精神のあるクライアントさんに会うと、うれしくなりますね。クライアントの担当者さんが持っている熱い気持ち、それをしっかりと伝えてあげたい、って考えになるんですよ。結局、役者というのは演じるお仕事なので、いろんな人たちの感情や想い、そういうものを栄養にさせていただいて、それを外に発信していく役割を担っているので。
阿部:最近ですと、愛社精神が高いと感じた仕事はありますか?
長澤:もちろん、どのクライアントさんもすてきで、担当者は愛社精神がある人たちばかりなので選べないですね。
阿部:そうですよね。一例を挙げるとすると…?
長澤:そうですね、最近で言えば、『クボタ』さんとかですね。打ち合わせの際も、担当者の方が「いかに自分たちの会社が素晴らしいか」を伝えてくれようとするので、こちらとしても、その気持ちに動かされてしまいます。一緒にお仕事をしていくうちに、その企業さんの商品が好きになり、取り組んでいる事業を尊敬するようになる。これって、私が単純過ぎるだけなのかな(笑)。でも、そういうふうにお互いをリスペクトし合える関係になることは、すてきだなと思いますね。
阿部:人を通して企業の想いを受け取り、それを自分に宿して表現していく、そういうことですね。
長澤:それはたぶん、機械にはできないことだと思うんですよね。私はそういうところを大切にしながら、広告のお仕事と向き合っている気がしますね。
(後編は4/28公開予定です)
電通キャスティングアンドエンタテインメントは、広告、映画、イベントに関するタレント、インフルエンサー、文化人、著名人などのキャスティングを行う電通グループ企業です。
カメラマン:藤川直⽮ ライター:佐々⽊翔
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