「今のままでは、母と同居を始めることなんてできない」。熊本市北区の主婦カオルさん(50)=仮名=は、健康や美容をうたう商品をマルチ商法(連鎖販売取引)で次々と購入する母親(76)に、いら立っている。
父親と兄は既に亡くなり、母親は同区のアパートで1人暮らし。数年前に地元の幼なじみに誘われ、「健康飲料」や化粧品のマルチ商法にはまった。月6万円強の年金暮らしにもかかわらず、1本1万円近くする清涼飲料水や、会員価格で1万3千円近くの美容液を毎月購入。母親自身も知人を数人勧誘した。
カオルさんは月4万円弱のアパートの家賃を立て替えているほか、ここ1年半ほどで30万円くらい用立てた。母親は他の親戚にも借金があるらしい。
カオルさんは、6年前に夫を過労死で亡くした。長男(24)は独立したが、支援学校に通う小学6年の長女に持病があり、長時間働けない。労災が認められた夫の遺族補償年金が出るため生活はできるが、長女のために蓄えておきたいという。
今年の初め、さらにショックなことがあった。新規会員限定で発売された4万5千円の飲料などのセットを購入するため、既に会員になっている母親が、孫である長男の名義を勝手に使おうとした。
この会社は3年前、「がんが治る」と虚偽の効能をうたった勧誘が特定商取引法違反に当たるとして、消費者庁から6カ月間の一部業務停止命令を受けていた。縁を切らせようと、知り合いの医師から「飲料は、普通に食べ物から栄養を取るのと変わらない」と文書で説明してもらっても母親は信じない。
来年1月には母親の土地にカオルさんが建てる新居が完成するが、「同居したらどんな事が起こるか…。どうしていいのかも分からない」とカオルさんの表情は晴れない。
県消費生活センターに寄せられる年間4800~4900件の相談のうち、マルチ商法に関するものは1%強の60~70件。ただ、本年度(10日現在)は3682件のうち1・5%近い54件と微増しており、県消費生活課は「コロナ禍で経済が厳しい中、少しでも金を稼ごうとしているのかも」と警戒する。
相談は親や子、きょうだいなど周りからが多く、「本人がその気にならないとやめさせるのは難しい」と同課。業者を行政処分しても商品名を変えたり、グループ会社を使ったりして商売を続ける“いたちごっこ”の現実もあるという。(太路秀紀)
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