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Monday, April 13, 2020

レオパレス訴訟でオーナー勝訴、「錯誤」とは何か - 楽待

サブリース契約をめぐっては、意に沿わぬ減額を要求されたり、それに合意しなかった場合に契約を解除され、入居者を引き上げられたりなど、さまざまなトラブルが報告されている。

そんな中、大手不動産会社「レオパレス21」(以下レオパレス)を相手取り、オーナーの一部が訴訟も繰り広げている。今年2月に出された地裁判決ではオーナー側が初めて勝訴。なぜこのような結果になったのか、弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所の阿部弁護士に解説してもらった。

岐阜地裁が「賃料減額合意」は無効と判断

2020年2月28日に、岐阜地方裁判所において、建物オーナーとレオパレスとの間で結ばれたサブリース契約に関連し、「賃料減額の合意」が無効であると判断されました。その上で、建物オーナーがレオパレスに求めていた、減額された分の賃料の返還請求が認められました。

これはあくまで第1審判決であり、レオパレスは名古屋高等裁判所に控訴をしているので、今後結論が覆る可能性はあるものの、レオパレスをめぐる一連の訴訟の中では、初めてのオーナー側の勝訴判決ということもあり、紹介をしたいと思います。

「減額に合意しなければ自動的に下がってしまうと…」

事案の概要は、次のとおりです。

原告の祖父が2003年ごろにレオパレスと建物の建築工事請負契約を締結し、30戸の住戸と24台分の駐車場を備える2階建ての賃貸住宅を建設しました。この原告の祖父は2014年に亡くなり、原告が建物(駐車場も含む)を相続しました。

原告の祖父は、レオパレスとの間でサブリース契約を締結していました。サブリース契約の期間は30年間で、当初10年間は、レオパレスが原告の祖父に対して支払う賃料は月額115万4700円。なお、サブリース契約には賃料の増減額に関する条項がありましたが、その内容は「○○年経過後、賃料が○○円となる」というものではありませんでした。

レオパレスは契約から9年が経過した2012年10月に、原告の祖父に対し、サブリース契約締結から10年が経過する後の賃料について協議をしたいと申し出ました。その際、原告の祖父に代わって、原告がレオパレスとの交渉に当たりました。

レオパレスは原告に対して減額案を3つ提示しましたが、原告はいずれの案も受け入れませんでした。そこでレオパレスは、3つの案のうち1つを修正した案を提案し、最終的に原告との間で合意に至りました。

合意した内容は、2012年11月から2013年3月までの賃料を月額67万4700円、2013年4月から2013年8月までの賃料を月額103万4700円、2013年9月から2015年8月までの賃料を月額103万4700円というものでした(なお、この金額で提案された理由は不明ですが、少なくともオーナーはこの金額で合意した模様です)。

これについて原告は、「これに合意をしなければ、自動的にこれ以上の賃料減額となってしまうとの錯誤に陥っていた」といいます。そこで原告とレオパレスとの間の賃料減額の合意は無効であると主張して、2017年、減額された分の賃料の返還を求めて訴訟(不当利得返還請求)を提起しました。

岐阜地方裁判所の判決は、レオパレスが、サブリース契約から10年経過後の賃料減額表に「通常改定」と表記するなどの説明を行っていたこと、これにより原告は「サブリース契約から10年経過すると賃料を自動的に減額されてしまう」との錯誤に陥り、そしてこの錯誤によって賃料減額の合意をしたことを認定。原告の主張を認め、原告が請求する賃料減額分の返還を認めました。

さらに判決では、レオパレスが原告の錯誤を知っていたこと、そして原告の錯誤を解くための説明をしなかったことを指摘しています。

「錯誤」とはどのようなものなのか?

さて、錯誤に関する民法上の取り扱いをご説明します。

2020年3月末までの民法95条は、「意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。」と規定しています。

つまり、一般的な取引通念においても、そのような事項に関する「そのことを知っていれば合意はしなかった」と言えるような、重要部分に関する錯誤があれば、合意の錯誤無効を主張することができます。

一方、錯誤無効を主張する側に「重過失」がある場合には、無効主張をすることができません。ここでいう重過失とは、注意義務を尽くしていれば錯誤に陥ることはなかったのに、著しく不注意だったために錯誤に陥ったことを意味します。

民法95条は、原則として、意思決定から表示行為までの間に錯誤があった場合を、錯誤無効の対象としていました。表示行為とは、「具体的な法律効果を求める意思を外部に表示すること」を言いますが、一般的には、取引の相手に対して、取引を実現するためにどのような表現をしたか、という理解で良いでしょう。

例えば、売買契約における言い間違い(100ドルを100円と言い間違えた)や言葉の使い方の間違い(本来1カートン10箱のタバコなのに、12箱であると勘違いして1カートンと言った)などを問題にしていました。

しかしながら、取引上、最も問題となるのは、「取引の動機」部分について錯誤に陥っていた場合です。例えば、「近くに新幹線の駅ができるから土地を高値で購入したのに、新幹線の駅ができなかった」というようなものを指します。

錯誤無効の適用は、そのほとんどが動機の錯誤と言われています。動機の錯誤が錯誤無効として認められなければ、錯誤無効の存在意義がないのです。ただし、取引の動機部分については、錯誤に陥った者の内心に留まることもあり、必ずしも取引の相手方に分かるとは限りません。

そこで、錯誤に陥った者とその取引の相手との利益を調整するために、最高裁は、動機の錯誤を無効とする要件について、通常の錯誤無効の要件(先ほどご説明した部分です)に加えて、動機の錯誤が黙示又は明示に表示されて意思表示の内容となったことを要件として、動機の錯誤を無効とすることを認めています。

例えば、Aが本屋でXという本の下巻を買おうとするとします。

その際、Aが本屋の店員に対して、「Xの下巻は自宅にないし読んだこともないから下さい」という場合、動機を明示したということになります。そして、Aが自宅に戻ってみると、自宅にXの下巻があった場合、動機の錯誤が問題となります。

それに対し、Aが本屋の店員に対して、「Xの下巻下さい」といった場合、店員に対して、動機は示されていません。このような場合に、黙示に動機が表示されたかが問題となります。

黙示に動機が示されているという事実認定(以前の状況などから、Aの動機の中に、Xの下巻が自宅にないということが動機となっていることが店員にとって分かる場合など)がなされれば、取引時点においては、Aの内心に留まっていたとしても動機の錯誤の問題となります。

ちなみに、錯誤無効に関しては、2020年4月1日施行の改正民法において、錯誤取消として改正がなされています。

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April 13, 2020 at 09:04PM
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