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Tuesday, May 2, 2023

「ピピピとワハハ」人工呼吸器が鳴る音と家族の笑い声…医療的 ... - 読売新聞オンライン

 医療的ケア児の姉を持つ佐賀市の小学6年生塚原 葉音はのん さん(11)が書いた作文を基に、福岡県を拠点に活動する音楽ユニット「チキンナゲッツ」が、家族の思いを伝える歌「ピピピとワハハ」を制作した。病気を知ってからの葛藤や家族のぬくもりをつづった内容で、今月下旬にCDが完成する。メンバーは「命の温かさを感じてほしい」との願いを込めた。(谷口京子)

  ピピピとワハハ 幸せのメロディ 我が家に響きわたる 二つの愛の音

 重症心身障害児対応のデイサービス施設「にこっと」(佐賀市)を4月上旬、チキンナゲッツの藤本成史さんと村田仁志さんが訪れ、葉音さんや姉の芽衣さん(13)らに完成した楽曲を披露した。葉音さんは、時折笑顔を見せる芽衣さんの肩に手を添え、優しいメロディーに聴き入っていた。

 曲名は、人工呼吸器が「ピピピ」と鳴る中、家族を包む笑い声を表している。宿題で書いた同じ題名の作文を読んだ芽衣さんの担当看護師が、「医療的ケア児やそのきょうだい、家族の気持ちを知ってほしい」と、親交があったチキンナゲッツに楽曲制作を依頼した。

 いじめ問題がテーマの楽曲「イカリヲアゲロ」を通じ、講演活動にも取り組んできた2人は「まっすぐな思いに応えたい」と快諾。作文を基に作詞、作曲を手がけ、多くの人に知ってもらえる機会を作ろうと、CD化を進めることになった。

 芽衣さんと葉音さんは双子のような仲良し姉妹で、どこに行くにも、何をするにも一緒だった。初めてケーキ作りに挑戦した日は、2人ともほっぺにクリームを付けて笑い合った。

 難病が襲ったのは2017年夏、芽衣さんが小学1年生の時だった。高熱が下がらず、搬送先の病院で、免疫が異常な反応を起こして脳を攻撃する「自己免疫介在性脳炎・脳症」と判明した。

 生活は一変した。母親の絵美里さん(37)は付き添いで病院に泊まり込む日々。当時6歳だった葉音さんは、祖父母の家に預けられることも多く、夜になると、涙があふれた。

 芽衣さんは寝たきりとなり、退院後も24時間の人工呼吸器の管理が必要で、食事も腹部の胃ろうからチューブで行う。入退院を繰り返し、家族での外出や旅行もできない時期が長かった。

  あのね おかあさんピアノ習いたいよ 今度授業参観きてくれるかな? 何度も言いかけてでも言えなくて お母さんの背中見て閉じ込めた

 我慢しなければならないことが増え、葉音さんは、「自分と同じような気持ちの人はいるのかな」との思いを抱えていたという。

 そんな時、デイサービスで開かれた交流会で、病気と闘う子や、そのきょうだいと出会ったことが転機になった。「同じように頑張っているお友達がたくさんいるんだ!」「一人じゃないんだ」と思えるようになった葉音さん。芽衣さんや病気と闘う子たちの役に立ちたいと、薬の研究者になることが将来の夢になった。

  ピピピとワハハ ずっとずっと一緒だよ

 家族の笑い声がすると芽衣さんもうれしそうに笑う。そんな芽衣さんを見て、また家族も笑顔になる。「みんなで笑えていることが、なによりも幸せなのかなって思います」。葉音さんは作文にそうつづった。

 CDはライブ会場などで販売するほか、慰問で訪れた学校や福祉施設に贈る。チキンナゲッツの藤本さんは「葉音さんや芽衣さんが教えてくれた命の尊さや温かさを歌に込めた。支援や理解が広がるよう、大切に歌い続けたい」とする。葉音さんと絵美里さんは「とても優しい歌で、私たちのような家族の存在を知ってもらえればうれしい」と願っている。

◆医療的ケア児 =新生児集中治療室(NICU)に長期入院するなどし、医療機関以外でも保護者らによる経管栄養やたん吸引といったケアを、日常的に必要とする子ども。医療技術の進展によって国内でも増えている。厚生労働省研究班の推計では2021年で在宅で約2万人おり、10年前の約1・4倍となった。

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