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Monday, August 1, 2022

「煤」形成 奈良高生が解明 - 読売新聞オンライン

 国の伝統的工芸品「奈良墨」の原料となる「 すす 」が炎の中で形成される過程の一端を、県立奈良高(奈良市)の生徒らの研究グループが突き止めた。煤の形成過程は、これまで詳しく分かっていなかった。結果は学術出版大手シュプリンガー・ネイチャーの学術誌に掲載される。日本の高校生の論文が、査読付きの海外有力誌に掲載されるのは珍しいという。(倉岡明菜)

 同高の仲野純章教諭が指導する3年の廉明徳さん(18)、久米祥子さん(18)と、京大生らでつくる研究グループが調べた。

 奈良墨は室町時代、興福寺 二諦坊にたいぼう の灯明の煤を集めて作ったのが始まりとされる。墨作りは分業で、い草の灯芯に火をともして煤を採取する「採煙」、 にかわ の溶液と混ぜる「練り」、形を整える「型入れ」など、七つの工程で完成する。

 奈良で作られる墨は国内生産量の約9割を占め、2018年には国の伝統的工芸品に指定された。しかし、作業は職人の経験則に基づくところが大きく、生産量も減少が続いている。

 生徒らは、そんな地元の特産品である奈良墨に注目。400年以上の歴史を持つ老舗墨店「古梅園」の協力を得て、墨の良しあしを決める上で特に大切な「採煙」について、煤ができるプロセスに迫った。

 古梅園では、専用の蔵でい草を編んだ灯芯に菜種油で火をつけて煤を採る。生徒らは実際に使われている灯芯の提供を受け、自作の装置で実験を重ねた。2センチ四方の銅板で煤を採取し、京大の電子顕微鏡も借りながら、煤のサイズや形状を確認していった。

 煤はこれまで、炎の上部に向かう過程で生じると考えられていた。だが、実験では、採取する高さを変えても煤の形や大きさに違いがないことが判明。炎の中心部から外側に広がる過程で煤が形成されると結論づけた。炎の縦方向の伸びよりも、横方向への広がりが煤の形状などに影響するとみられる。

 英語の論文をまとめた廉さんは「結果をどう捉えるか、考察に時間がかかったが、論文が採択され、科学的に認められたことがうれしい」と喜ぶ。久米さんも「研究を通して、課題を解決する力が身についたと思う。違う分野での研究にも挑戦したい」と意気込む。

 仲野教諭は「奈良墨の科学的な考察は、今後の技能継承にも役立てることができるはず」と話す。

 研究の結果は、学術誌「アナリティカル・サイエンシズ」に掲載される。

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