07月07日 19:31
【参院選】有権者の一票 どんな思い託す? 伝統産業の現場が政治に望むこととは・・・《新潟》
7月10日が投票日の参議院選挙。有権者は一票にどんな思いを託すのかシリーズでお伝えしています。人口減少に若者の流出。高齢化も進む中で地方の産業は担い手不足に悩まされています。伝統産業の現場が政治に望むこととは…。
塩沢地区にある小さな工場。1933年創業の『酒井織物』です。サラリとした肌触りに“絣”と呼ばれる細かい模様が特色の“本塩沢”。国の伝統的工芸品にも指定されています。
昔ながらの製法で糸一本から職人たちが丹精を込めて作る塩沢の織物。完成するまで30以上の工程が必要で、1反仕上げるのに半年ほどかかることもあります。
燃料費や材料費の高騰。しかしそれ以上に切実な課題に直面しています。
従業員11人の『酒井織物』。最も若い39歳の職人を除くと全員が70歳を超えていて技の継承が大きな課題となっています。
かつては一大産業として栄えた塩沢地区の織物。しかし36あった織物工場はこの40年で8つにまで減少しています。“着物離れ”に若者の担い手不足が追い打ちとなったのです。
【酒井織物で働く人は】
「私らの時はこれが女の仕事でいたから、親もやってたりして。本当に好きじゃなかったらできない仕事だと思いますよね」
5万4000人が暮らす南魚沼市。1998年以降、転出者が転入者を上回る“社会減”が続いています。特に顕著なのが“若者の首都圏への流出”です。
国の推計では南魚沼市の人口は2045年までに4万人を割り込み15歳から64歳までの生産年齢人口は2万人を下回ると予想されています。急速な人口減と過疎化が課題を突き付けていました。
こちらは魚沼地域の経済を支えてきた『塩沢信用組合』。地方の高齢化が進む中、若い人の働き手が足りないと多くの事業者から相談を受けています。
【塩沢信用組合 小野澤一成理事長】
「地方であればあるほど“地区外流出”が鮮明になりますので、若い人がいるいないとでは全然活力が違いますので」
若者の定住を図るため、『塩沢信用組合』では国内最長となる51年の住宅ローンを設定。また、若手経営者を育成するため“経営塾”を開催するなど、次の世代の担い手づくりを進めてきました。
政治に期待することは…
【塩沢信用組合 小野澤一成理事長】
「若者に対して場合によって学費を免除してやったりとか、若い人たちが働きやすい住みやすい、より自分たちの魅力を自ら見出せるような、お年寄りに手間かける分やっぱり若者に手間かけなきゃだめですよ」
塩沢地区にある『酒井織物』。
【酒井織物・3代目社長 酒井智子さん】
「私の祖父…初代の文二と先代の父ですね」
Q)先代?
「武」
Q)いつ亡くなられたんですか?
「2年前ですね、今月三回忌になります」
2代目の酒井武さん。50年以上に渡って工場を引っ張ってきましたが、おととしの夏に病気で亡くなりました。
【酒井智子さん】
「こんなに早くという感じは誰も思わなかった」
武さんの長女・酒井智子さんです。当時は後継者もおらず、赤字も抱えていたため家族の気持ちは廃業に向いていたといいます。
【酒井智子さん】
「え、じゃあ辞めるんだったらどうすればいいのって父が遺体で寝ているところで子どもたちがスマホで『お母さんやめるんだったら廃業届というのを出せばいいらしいよ』って、そんな話をしてたぐらいだったんですね、それぐらい綱渡り状態だったというか」
亡くなる2日前、父からこんなことを告げられました。
【酒井智子さん】
「やるもやらないもお前たちの自由だと、好きにしろと」
“やるもやらないもお前たちの自由…”
この言葉が心残りだった智子さん。東京で人材コンサルタントをしていましたが、仕事をやめて家業を継ぐことを決めました。
今、3代目として工場の立て直しに向けて試行錯誤を続けています。
智子さんは去年、“着物”と“オペラ”を融合したイベントを開催。
また“本塩沢のジャケット”を開発するなど、織物の魅力発信に力を注いでいます。若者のリクルート…人材を集める手段の一環です。
【酒井智子さん】
「若い方たちが興味がないわけではないんですけど、あまりにも日常生活と離れすぎているんで、どこから関わっていいのか分からないんだと思う。そういう方で、こういう文化継承とか、ものづくりに興味のある方は、全面的にいろいろ受け入れたいと思っているんですが…」
ふるさとに帰ってきて2年…。地方の魅力がもっと生かされる社会になることを望んでいます。
【酒井智子さん】
「伝統的工芸品というのは先人の知恵があるものです。それを後世につないでいきたいという思いがあります。ITばっかりが仕事じゃない、ITを支えているのも日本のものづくりですよね、半導体とか。製造業とかそういったものにもうちょっと目を向けるような取り組みみたいなものがあれば。新しい取り組みとか文化継承に対する取り組みに対して、もうちょっと目を向けてもらいたいというのは正直ありますね」
伝統産業が廃れれば地元の文化も衰え、若者はさらに離れていく。
工場ではきょうも機織りの音が響きます。織りなす布が地域の活力をつむぐように…。
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