
【動画】まるでコンビ? 明石家さんまが司会と息ぴったりの爆笑トーク
■さんまの確信「ココちゃんならやれる」 渡辺監督も賛辞「すばらしい女優さん」
本番直前、さんまさんの場を和ませる一言により緊張がほぐれたCocomiさん。台本を片手に画面を見ながら、透き通った瑞々しい声で語り始めると、周囲の不安はスッと消えていきました。渡辺監督はCocomiさんの声に、少女のもつちょっとしたブレ、はかなさのようなものを感じ、Cocomiさんの声の響き、初々しいトーンを尊重し、技術的な指導はせず、作り込んだ芝居をさせないよう演出します。さんまさんはキクコが話す大阪弁を指導しながら、「ココちゃんならやれる」と判断し、浮かんだアイデアをどんどんCocomiさんに伝えていきました。
渡辺監督:非常に勘がよくて、さんまさんのオーダーにもさっと応えられるし、テイクを重ねても、納得いくまでやりたい!という根性がある。今回は幼少時のキクコの演じ分けもあり、フルートまで演奏してもらって。こちらの高すぎる要求に応えるだけのポテンシャルを持った、すばらしい女優さんだなと思いました」
(『漁港の肉子ちゃん』パンフレットより)
劇伴音楽を担当するのは、『思い出のマーニー』『メアリと魔女の花』などの作品を手がけた作曲家・村松崇継さん。フルート奏者であるCocomiさんは、キクコの心情を表す楽曲でフルートを演奏することになり、肉子ちゃんとキクコの絆が固く結ばれる感動的なシーンをさらに輝かせます。
村松:シーン合わせの楽曲では、シーンをモニターで観ながら演奏されていたのですが、その表現力には、本当に作家として感動をしました。
(『漁港の肉子ちゃん』パンフレットより)
Cocomiさんは、当初は子役を起用する予定だった幼少期のキクコの声や、『漁港の肉子ちゃん!』とタイトルを叫ぶ声も担当することになりました。さんまさんは、この作品におけるCocomiさんの貢献度を高く評価し、「中には、僕が木村と知り合いやからCocomiちゃんを起用したんじゃないかって思ってる人もいると思うんですけど、作品を観ていただけたら、そういう理由じゃないっていうことがわかってもらえると思います」と、力強く語っていました。
肉子ちゃんとキクコを取り巻く漁港の人々や動物たちの声も、さんまさんと所縁のある方々が担当することになりました。焼き肉屋「うをがし」の店主・サッサンには、さんまさんの主演舞台『七人ぐらいの兵士』に出演された中村育二さん。キクコの同級生・二宮には、さんまさんがハマったアニメ『鬼滅の刃』で主人公・竈門炭治郎を演じた花江夏樹さん。同じく『鬼滅の刃』で我妻善逸を演じた下野紘さんは、キクコの心の声を発するトカゲとヤモリを担当。怪しい霊媒師にはマツコ・デラックスさん。肉子ちゃんの親友・みうには吉岡里帆さん。さんまさんの舞台では欠かすことのできないメンバーである山西惇さんと八十田勇一さんは、漁港で暮らす人々など、複数のキャラクターを担当。
キクコの同級生・マリア役には、総勢1673人が参加した声優オーディションで、さんまさんの目に留まった14歳の新人、石井いずみさん。そのほか、漁港で暮らす人々や動物たちには、さんまさんが今最も大切にされている番組『さんまのお笑い向上委員会』を支える芸人さんたち。数々の番組でさんまさんと共演されてきた宮迫博之さんと滝沢カレンさんも、クスリとくる役どころで出演されています。
■GReeeeNの親交が生んだエンディングテーマ 「イメージの詩」で吉田拓郎への恩返し
映画のエンディングテーマ曲『たけてん』を制作したのは、4人組ボーカルグループのGReeeeN。さんまさんと以前から親交のあるGReeeeNのHIDEさんが作品への参加を希望し、実現したそうです。『たけてん』というタイトルはさんまさんが名付けました。HIDEさんから「曲のタイトルを付けてくれませんか?」と頼まれ、さんまさんがLINEで返した5つのタイトル案の中からHIDEさんが選んだのが『たけてん』でした。『たけてん』の意味は、肉子ちゃんが漢字を分解して意味ありげな事を言う癖をもっていることから、『笑』という漢字を分解し、「竹と天で、たけてん」ということです。さんまさんも以前から漢字を解体して意味を探るのが好きで、『笑』という漢字を分解して笑いをとったことがありました。
『たけてん』は、さんまさんの青春時代をモチーフにして作られた楽曲ということもあり、
GReeeeNの公式YouTubeチャンネルで配信されているミュージックビデオには、友情出演するさんまさんの姿も見られます。そして、この映画の中核をなす、非常に重要なシーンで挿入される主題歌『イメージの詩』。この楽曲は吉田拓郎さんの作品で、さんまさんの愛してやまない“人生の一曲”です。この楽曲が作風に合うと判断したさんまさんは、熟考の末、「10歳の女の子に歌ってもらおう」と提案。そうして出会ったのが、人気子役として活躍する10歳の少女、稲垣来泉(くるみ)さんでした。
編曲を担当したのは、拓郎さんの盟友・武部聡志さん。サウンドプロデュースをGReeeeNが務めることになりました。レコーディング当日、稲垣さんは、さんまさんの要望に笑顔で応えながら、素直に、生き生きと歌い上げ、さんまさんのイメージしていたまんまの、『イメージの詩』が完成します。
吉田拓郎:最初の一行でジーンとしてしまってね。彼女が歌っている『イメージの詩』の世界にねぇ、グイグイ引き込まれていって、気がついたらねぇ、僕の頬には涙が流れていました。
あまりの素晴らしさに、ほんとに僕は言葉を失っているんです。拍手です。素晴らしいです、来泉ちゃん。そして、稲垣来泉さんをボーカルに抜擢した明石家さんまさんにも拍手。
武部はやっぱり、俺の音楽わかってんなぁって。『イメージの詩』をわかってくれてると強く感じました。良いアレンジだね。
ほんとに、この企画に携わった皆さんに、心から感謝して、ありがとうって言いたいです。胸がいっぱいです。
(ニッポン放送『吉田拓郎のオールナイトニッポンGOLD』2021年5月14日より)
喜びを爆発させて感想を述べる拓郎さん……拓郎さんの楽曲に幾度も励まされてきたさんまさんは、拓郎さんに大きな恩返しができたのではないでしょうか。
■お笑い怪獣の矜持「笑いで地球を救いたい」 次作はさんまの日常をアニメ化?
さんまさんはかつて、『サンタクロースつかまえた!』(1989年)『リリが見たやさしい虹』(1990年)という、2本のオリジナルビデオアニメーションの制作に携わりました。どちらも“信じる心の大切さ”を描いており、さんまさんの二人の子供たちへ向けて作られた作品でした。さんまさんが『漁港の肉子ちゃん』の映像化を熱望した一番の理由は、辛い思いをしている人を一瞬にして笑顔にさせてしまう、純真で真っ直ぐな肉子ちゃんを、もっと多くの人に知ってもらいたかったからではないかと僕は思っています。悲しんでいる人たちを笑顔にしたい、そういう思いから始まった企画であると思うのです。
さんまさんは5月26日に行われた完成報告会のインタビューの席で「一人でも多くの方に観てほしいですけど、それよりも完成したことで僕はかなり満足してます、ほんとに」と語っていました。ですが、コロナ禍の現在、映画業界にとっても非常に厳しい状況の中、誰もが不安を抱える今だからこそ、一人でも多くの方にこの作品を届けたいという思いはさらに膨らんでいるのではないでしょうか。それはこの作品に携わられた方、全員の気持ちであるはずです。
渡辺監督:やっぱり完成したからには、世の中に伝えたいっていうのと、より多くの方に観ていただいて、いろんな思いを感じとっていただけたらなぁと思います。
それが、こうやって魂を入れてくださった役者さんや、アニメーターさんたちを労うことになると思いますので。ヒット云々よりも、届くところに届いてくれたらなという気持ちでおります。
(『漁港の肉子ちゃん』完成報告会インタビューより)
『漁港の肉子ちゃん』は、下野紘さんによるバリアフリー音声ガイドが制作されており、目の不自由な方にも作品を楽しんでもらえるよう配慮されています。去る6月18日には、アニメーション作品の最高峰とされる国際映画祭「アヌシー国際アニメーション映画祭」から正式招待を受け、フランスの映画ファンを魅了。8月にはカナダのモントリオールで開催される「第25回ファンタジア国際映画祭」に正式招待されることも決定しています。さんまさんは以前、自身のテレビ番組で、こんな発言をされたことがありました。
さんま:俺は愛で地球を救うんじゃなくて、笑いで地球を救いたいんですよ。
(フジテレビ系『お台場明石家城』2004年5月31日より)
この発言は、日本テレビの『24時間テレビ「愛は地球を救う」』の話題が出たときに冗談めかしておっしゃったことではありますが、『漁港の肉子ちゃん』という、さんまさんの笑いの要素がふんだんに詰め込まれた感動作が、言語の壁を超え、地球で暮らす世界の人々へ届こうとしている今、さんまさんのこの願いが現実のものになろうとしているのではないかと思えてなりません。話が少々大きくなってしまいましたが、少なくとも『漁港の肉子ちゃん』は、その可能性を秘めた作品であると僕は思います。
最後に、余談にはなりますが、さんまさんと渡辺監督が『漁港の肉子ちゃん』完成報告会のインタビューの席で語っていた次の会話を、僕は聞き逃しませんでした。
さんま:あのねぇ、渡辺監督がしつこいぐらいに、“さんまさん一人で、一本のアニメを作りたい”って言うんですよ。僕が普段、過ごしてる姿が、アニメのようだと。
渡辺監督:さんまさんの動きはもう、ほぼアニメですよ。昔の『オレたちひょうきん族』の頃の動きなんていうのは、めちゃくちゃ凄いですからね。アニメみたいな動きをしてますから。
さんま:今回、アニメという世界がちょっとでもわかったっていうのが新しい発見で。かなりのお金を出していただいて作ったんですけども、また出していただけるんなら、もう一歩、アニメ界にも踏み込めるかなっていう思いは、ちょっとあります。
渡辺監督はどうやら、さんまさんの“体の動き”に興味をもたれているらしく、さんまさんの日常を一本のアニメにしたいと考えているようなのです。さんまさんも機会があれば、またアニメを作りたいという思いを抱いている。ということは、もしかしてもしかすると、僕が書いた本『明石家さんまヒストリー』のアニメ化が、さんまさんプロデュース、渡辺監督の演出で実現するのではないかという妄想に駆られたところで、この稿を閉じたいと思います。
【エムカク】1973年福岡県生まれ、大阪府在住。明石家さんま研究家。ライター。1996年より「明石家さんま研究」を開始。以降、ラジオやテレビ、雑誌などでの明石家さんまの発言をすべて記録し始める。その活動が、水道橋博士の目に留まり、2013年9月10日より「水道橋博士の『メルマ旬報』」で連載「明石家さんまヒストリー」をスタート。莫大な愛情と執念によって記録されたその内容は、業界内外で話題を呼んでいる。日本テレビ「誰も知らない明石家さんま」など、テレビ特番のリサーチャーも務める。『明石家さんまヒストリー1 1955~1981「明石家さんま」の誕生』がデビュー作。『明石家さんまヒストリー2 1982~1985 生きてるだけで丸もうけ』が6月28日に発売。
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からの記事と詳細 ( 屈指の“さんま研究家”エムカク氏が読み解く『漁港の肉子ちゃん』ができるまで(後編):紀伊民報AGARA - 紀伊民報 )
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