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Sunday, May 16, 2021

トヨタシステムズによるLEXUSビジュアライゼーション | 特集 | CGWORLD.jp - CGWORLD.jp

トヨタシステムズのCG事業推進部はクルマの設計データ(3D CADデータ)から様々な動画・静止画・VR・AR・コンフィグレータなどのCGコンテンツを制作してきた。その中には、高級車ブランド LEXUSのCGも含まれる。本記事では、そのワークフローや飽くなきこだわりを解説する。

※本記事は月刊『CGWORLD + digital video』vol. 272(2021年4月号)掲載の「トヨタシステムズによるLEXUSビジュアライゼーション」を再編集したものです。

TEXT_石井勇夫 / Isao Ishii(ねぎぞうデザイン)
EDIT_尾形美幸 / Miyuki Ogata(CGWORLD)




▲LEXUS Webコンフィグレータの紹介動画
2020年10月公開
© TOYOTA SYSTEMS. All Rights Reserved.

最新かつ正確な設計データを基に高品質なCGを制作

名古屋と東京に本社を置くトヨタシステムズは、クルマ業界のリーディングITカンパニーだ。同社のCG事業推進部は、10年以上にわたりクルマの設計データを基に様々なCGコンテンツを制作してきた。その経験と知識を活かし、製品開発から販売促進まで、幅広い領域で課題解決のためのビジュアライゼーションを提案している。同部に所属するスタッフは約40名で、スマートエンジニアをはじめとする協力会社のスタッフも含めると約100名の大所帯となる。同部はプロジェクトの舵取り役として、トヨタ自動車をはじめとするクライアントとのやり取り、企画立案、スケジュールやコスト管理などのプロデュース業務を担う。アートディレクションまで担う場合もあるが、画づくりの多くは協力会社と共に行なっている。

クルマ業界におけるCGの需要は年々高まっており、社内向けイベントや、国内外の関係者向けイベントの資料、顧客向けの車両カタログなど、様々な用途で活用されている。例えば、CGを使うと開発中の設計データから完成車両の動画や静止画を制作できるため、実物が完成する何ヶ月も前からイベントや商談を進められる。また、世界各地に顧客をもつLEXUSは、販売地域によって売れ筋の色や仕様(グレード)が変わるため、車種ごとに数百点の画が必要となってくる。全てを実物の撮影でまかなうのは現実的ではないため、ここでもCGが重宝される。

同部のスタッフの一部はトヨタ自動車の各拠点に常駐しており、逐次更新される設計データからCGコンテンツの制作に必要なものを抽出し、プロジェクト内で共有する。クルマの設計データは機密性が高く、非常に複雑だが、最新かつ正確な設計データを基に、高品質なCGコンテンツを効率良く低コストで制作できる点が同部の強みと言える。

車両開発と歩調を合わせたビジュアライゼーションのスケジュール

▲新型LEXUSのビジュアライゼーションのスケジュールの一例。17ヶ月におよんでおり、車両開発と歩調を合わせながら、社内向けイベントや、国内外の関係者向けイベントのための動画と静止画が制作される。静止画は顧客向けの販促物制作にも用いられる。なお、つくる画は外装・内装・メカの3種に大別される。その詳細は以降で紹介していく

パーツ単位のデータを収集し、完成車両を組み上げる

新型LEXUSのビジュアライゼーションを手がける場合、その制作は新型発売の1年以上前にスタートする。社内向けイベント用の動画制作では、CG事業推進部のスタッフが車両開発者に新型の訴求ポイントをヒアリングしながら企画を練り上げる。開発中の車両は、組み上がった状態の設計データが用意されているわけではないので、スタッフが最新の仕様を確認し、パーツ単位の設計データを収集し、3DCG空間の中で完成車両を組み上げていく。必要なパーツがデータベースにない場合は、設計担当者に問い合わせることもある。

前述の動画と併行して、静止画の制作も進められる。いずれの場合も、カメラの位置、角度、画角には非常にこだわっており、これらを吟味するアングル検討会には多くの関係者が出席する。扱う車種がひとつであっても、その訴求ポイントは複数あるため、「フロント」「フロントクォーター(斜め前)」「リア」など様々なアングルの画が用意される。また、それぞれに外装・内装の色ちがい、仕様ちがいの画が必要となるので、「フロント」だけで30点近くの静止画がつくられるケースもある。さらに2回のチェック会を経て完成した画は、各地の販売拠点に新型の訴求ポイントを伝えたり、各地のニーズをヒアリングしたりするための資料として使われる。

画づくりに使われるパーツのデータは膨大な数となり、逐次更新もされるので、その管理は非常に煩雑なものとなる。そのため、パーツリストを参照し、自動的に完成車両を組み上げる社内ツールが開発されている。それでも何らかの間違いは起こり得るので、目視での最終確認も入念に行なっているという。

アングルひとつに対し50点を超える候補をレンダリングし、採用する画を検討

▲ひとくちに「フロントクォーター」と言っても、その選択肢は膨大だ。その中から、車種のコンセプトや訴求ポイントが明確に伝わるものを見極めるため、アングルひとつに対し50点を超える候補がVREDでレンダリングされ、検討が重ねられる。なお、1点あたりのレンダリングに要する時間は5〜10分程度で、ライティング時には約40パターンのライティングライブラリの中から適切なものを選択する


▲検討を経て作成された、アングル検討会のための資料。前述の50点を超える画の中から厳選された1点(左上)と、そのほかの候補6点(下)が掲載されている。右上の6点は、過去に制作した別の車種の画だ。アングル検討会にはLEXUSの車両デザイナーも出席し、まる1日かけて各アングルの画が吟味される。経験を積み重ねてノウハウを蓄積し、さらに高い品質の画づくりを目指す地道で実直な姿勢は、トヨタ自動車に脈々と受け継がれてきたモノづくりの姿勢に通じるものがある

© TOYOTA SYSTEMS. All Rights Reserved.

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外装はVRED、内装はV-Rayでレンダリング

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