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Monday, May 17, 2021

被災庁舎建て替え 住民守る機能一層確実に | 熊本日日新聞社 - 熊本日日新聞

 熊本地震から5年を経て、宇土市と益城町で被災した庁舎の建て替え工事が始まった。これで建て替えを余儀なくされた県内8市町の新庁舎が、2023年春までにすべて完成する見込みとなり、いずれも防災機能の向上が期待されている。平時はもちろん、非常時でも行政機能を維持し、住民の安全・安心を守る拠点の役割を確実に果たしてほしい。

 熊本地震の前から耐震不足を指摘されていた宇土市役所の旧庁舎は、被災して5階建ての4階部分がぐしゃりとつぶれた。倒壊の恐れから隣接の建物も立ち入り禁止となり、市は駐車場に置いた災害対策本部で震災対応にあたった。市民向け窓口の再開には1カ月近くかかり、被災者の生活再建に大きなブレーキがかかった。

 着工した新庁舎は4階建て。免震部材の組み合わせで震度7にも耐えられる構造となっている。災害時には、駐車場を自衛隊・警察・消防の活動スペース、支援物資の配布場所、車中泊用の敷地に区分けする。災害対策本部機能を高める工夫だ。

 一方、益城町役場の旧庁舎は、被災時に耐震化工事を済ませていた。それでも、2度目の震度7となった本震で建物に複数の亀裂が入り、基礎部分が大破。非常用電源や通信回線が途絶え、防災拠点としての機能を失った。

 新庁舎は免震構造の4階建て。災害を想定し、2階の町長室近くに危機管理課と防災行政無線オペレーション室を置く。備蓄倉庫や非常用発電機などのほか、飲料水3日分の貯水機能付きの給水管も備える予定だ。

 市町村の庁舎は、災害時に住民を守り、生活再建を支えていく拠点である。宇土市は建設にあたって「司令塔の機能を失わない」ことを大前提とした。益城町は「新たな防災拠点としての役割を果たす庁舎にしたい」とする。住民を交えての災害対応訓練などソフト面の取り組みも充実させ、地域の防災・減災力の向上を一層進めてほしい。

 忘れてはならないのは、万一の場合に備えて二重三重の手だてを想定しておくことだ。一極集中の防災拠点を過信すると、それが機能を失った時の対応ができにくくなる。

 昨年7月の豪雨災害で、高台にあった球磨村役場は浸水を免れたが、停電や断水、通信環境の悪化によって災害対策本部機能を失った。県内の複数自治体のホームページ(HP)が閲覧不能になったのも、人吉市の通信業者のサーバーが水害の影響を受けたためだった。インターネットを使ったHPやSNS(会員制交流サイト)は災害時に欠かせない情報手段となっており、十分なバックアップが求められる。

 このほか、熊本地震後に「耐震不足」と指摘された熊本市役所の本庁舎を巡っては、市が建て替えの是非をさらに検討する考えだ。市民に分かりやすい形で議論を進め、広く納得を得られる結論を示してほしい。

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