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Wednesday, February 24, 2021

イノベーションに不可欠な「自己再定義」とは何か - 日経クロストレンド

イノベーションとは、社会課題の本質に気づき、その課題解決に果敢に挑戦する過程で生まれるもの。この実現に有効なのが、デザインマネジメントという考え方だ。最終回となる今回は、磨かれた視点を使って、実際にイノベーションを実現するにはどうしたらいいか解説する。本講座を読み、さらに興味を持った読者向けに、筆者による「デザインマネジメントによるイノベーター育成講座」も4月からオンラインで開講する。

 連載2回目では、デザインマネジメントを実践する上で必要な視点をどう磨けばいいかということを解説した。今回は、その磨かれた視点を使って、実際にイノベーションを実現するにはどうしたらいいかを考えていきたいと思う。

 例えば、デッサンでコップを描くとする。すると、必ず何人かは、コップの縁を鋭角に曲げて描いてしまっている。よくよく見てほしい。円になっているものは、どの角度から見たとしても、必ずアール(円のように曲がった部分)が残った楕円形になっているはずだ。

コップの縁を描いてみる。縁を鋭角に描いている人は、もう一度コップを見てみよう

コップの縁を描いてみる。縁を鋭角に描いている人は、もう一度コップを見てみよう

 デッサンをする上で、きちんと編集力を伴って形が描けているだろうか。描けていない場合は、リサーチ能力が足りないということになる。つまり、自分の弱点がどこにあるかが分かるということだ。であれば、リサーチ能力を高めるために、歩いたり、触ったり、いろいろなことを試してみる必要があると気づくはずである。

 こういうことを教えられると途端に伸びる人がいる。Aパターン、Bパターン、Cパターンと、さまざまな可能性がある中で、Aパターンでずっとやっても伸び悩んでいるときに、いかにBパターン、Cパターンを見つけることができるか。こちらからヒントを与えることはできるが、その可能性を見つけ、伸ばすことができるのは本人だけだ。

 このようにして、洞察力やリサーチ能力を圧倒的に高めることができれば、今までやっていなかったチャレンジもできるようになるだろう。ポジティブな思考も持てるようになってくるはずだ。

デッサンで、しなやかな感性を磨く

 一足飛びでうまくはならないのは覚悟しておいてほしい。デッサンには、”デッサン筋”というものがあって、筋肉の使い方が日常生活とは少し違う。意思を持った線を描く動きを、頭と体に覚えこませることが求められる。そのためには、それなりのトレーニングが必要となる。

 線を描く反復運動を繰り返していくと、どんどん脳内のシナプスが活性化し短縮回路を形成していく。すると次第に、あまり考えなくても自分なりの表現ができるようになる。この繰り返しが非常に大切だ。こうしたデッサンを練習する過程の中で、モノを多面的に見る視点が鍛えられ、しなやかな感性が磨かれていくと考えている。

 大学などの講義では、実際にデッサンした後、自分がどこに注目して描いたのか話してもらうことも多い。ここで重要なのは、自分の視点がどうなっているかを客観視しないと、その話ができないという点だ。ちょっと引いた自分がいて、自分は何を考えていたのだろう、本当はどうしたかったのだろうといった、第三者的な存在を自分の中につくる必要がある。絵を描くという行為は、まさにこういった体験ができるものなのである。

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