26日告示、4月9日に投開票される広島市長選。現職の松井一実氏(70)が4選を目指して立候補を表明し、共産党広島県委員会は同委員会書記長の高見篤己氏(70)を擁立した。市長選を前に、街づくりや平和といった観点から市の課題を考えた。(興野優平、黒田陸離)
20日、広島市中区の旧広島市民球場跡地。2階建ての建物やスケートボード場が中央に設けられた広場を囲うように並び、建物の屋根や壁には仕上げの塗装が施されていた。
同跡地には、31日に新たに商業施設「SHIMINT HIROSHIMA(シミントひろしま)」が開業する。飲食や物販など16店の出店が公表されている。開発は企業グループが手がけたが、市が公募で選び、事業費も約11億7千万円を負担した。隣接エリアには2024年2月にサッカースタジアムが開業する予定だ。
JR広島駅には25年春に地下1階、地上20階の新駅ビルが完成する。ショッピングセンターや複合映画館などが入り、広島電鉄の路面電車も2階に乗り入れる。
「まちづくりは着実に進展した」。松井氏は2月の会見でこう胸を張った。
松井氏は3期12年、「都心の大改造」を一貫して掲げ、紙屋町・八丁堀地区と広島駅前の開発に重点的に力を注いできた。
こうした中、広島市の人口は20年に初めて120万人台まで増加した。だが、市からの転出が市への転入を上回る「転出超過」の状態が17年から続く。22年の転出超過は2522人と、全国の自治体で3番目に多かった。20代が865人と3割を超える。
広島修道大学の伊藤敏安教授(公共政策)は「都市全体の産業構造を変えて魅力を高める一環として再開発は重要だ」と話す。若い世代をつなぎとめるためには「職種の選択肢が豊富にあるか、魅力ある仕事があるか、が問われることになる」と指摘する。
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2月14日、松井氏は5月に主要7カ国首脳会議(G7サミット)を控える中、長崎市の田上富久市長と首相官邸やG7各国の大使館を訪問し、首脳らによる平和記念資料館の視察や被爆者との対話などを求めた。
その翌日、被爆者団体など10団体が広島市内で会見を開き、市や国、参加各国に、資料館の視察など同様の要請を表明した。県原爆被害者団体協議会の佐久間邦彦理事長は「核兵器の廃絶が広島の使命で、実践するためには声を上げなければいけない」と訴えた。
核兵器のない世界の実現。市政にとって平和は大きなテーマであり、広島には平和活動に取り組む市民団体の厚い層がある。
松井氏は8月6日の平和宣言や、岸田文雄首相へ要請文を手渡すなどして日本政府に核兵器禁止条約への署名・批准を求めてきた。ただ、政府の姿勢は変わってない。
今月16日に市長選への立候補を表明した共産党県委員会書記長の高見氏は「核兵器廃絶への本気度が問われている。核兵器禁止条約の署名を国に迫るために先頭に立って頑張る必要がある」と述べた。
被爆者が高齢となる中で若い世代への活動の広がりや伝承が課題となっている。
平和記念資料館などで語る「被爆体験証言者」の平均年齢は85・9歳(昨年4月1日時点)。その証言者から聞き取り、講話を語り継ぐ「伝承者」の平均年齢も65・2歳だ。
昨年12月、広島市で開かれた核兵器廃絶への道筋を国内外の有識者が議論する国際賢人会議では、NGOなどとの意見交換の場で、委員から「気候変動問題と同じ情熱を持ち、若い人たちに核兵器について話してもらうにはどうすればいいのか」という声が上がっていた。
「平和が強く前面に出るイベントは参加しづらい人が多い」。核廃絶を訴える高校生平和大使として活動した経験がある叡啓大学1年の梶原百恵さん(19)はそう感じてきた。大学進学後に県外出身の学生と交流する中で、その思いを強くした。
「知識がないと平和活動に参加できないという印象になりがち」。敷居を下げたいと、最近、小さなイベントを学生たちで開いた。平和記念公園を訪ねるなどして、歌詞を考え、平和への思いを込めた曲をつくったという。「関心のない人たちにもいつのまにか届く」。そんな平和発信のあり方を思い描く。
からの記事と詳細 ( 開発進む都心・そして平和発信は…広島市政の課題を考えた:朝日 ... - 朝日新聞デジタル )
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