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Monday, August 29, 2022

温浴施設を再整備、新たなリゾート地に<山形・バブル夢のあと(下)> - 河北新報オンライン

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 バブル崩壊から約30年。当時の好況を追い風として建てられ、時の流れの中で行き詰まりを迎えた施設は少なくない。山形県内で今、往時のにぎわいを物語る「遺産」や、その周辺を再活用する動きが加速している。旧施設の功罪と隣り合わせで変容する現場を訪ねた。
(山形総局・小田島悠介)

2021年3月に閉館したハイジアパーク南陽=南陽市上野

取り壊すなら数億円

 1万1000円。驚くような売買額が示された。

 南陽市の第三セクターだった温浴施設「ハイジアパーク南陽」。鉄筋コンクリート2階の建物は2021年9月、異例の金額で市から民間企業へと引き渡された。施設は経営難のため、同年春に営業を終えたばかりだった。

 譲渡は、新リゾート「四季南陽」の誕生を見据えた判断だ。スポーツカーのフェラーリも手がけた山形市出身の工業デザイナー、奥山清行氏らが施設を取得。23年秋のオープンを目指し、再整備を進めている。

 旧施設の建物を改装した新たな物販施設や、全ての客室約30室に露天風呂が付くという新築のホテルが順次、完成する見込みだ。奥山氏が中心となる運営企業は、新リゾートに10億円規模の投資を予定する。

 奥山氏は「(売買額は)お年玉のようだが、初期投資全体の中で決まった金額だ」と説明。白岩孝夫南陽市長も「魅力的な提案と投資がなければ、市が数億円をかけて取り壊すしかなかった」と語る。

新リゾートの発表会で並ぶ(左から)白岩市長、奥山氏、隈氏、奥田氏の4人=4月4日、南陽市文化会館

新ホテルは隈研吾氏が設計

 旧施設はバブル期に構想が浮上し、1992年に開業した。市は国による地域総合整備事業債で約33億8000万円を確保した。この起債を含め、89~92年度に総事業費約41億7000万円を投じ完成させた。

 93年には隣接のプールが開業し、週末は家族連れで混み合うようになった。当時を知る施設関係者は「臨時の駐車場も足りず、近くの道路に車が並んでいた」と盛況ぶりを振り返る。

 ただ温泉も含めた施設全体の収支は安定せず、各年で赤字と黒字を行ったり来たり。利用料の値下げで一時、入館者は伸びたが、収益の改善にはつながらず、開館29年目で幕を閉じた。

 新リゾートは、経営難に苦しんだ旧施設を引き継ぐ。しかし、奥山氏は今年4月の記者発表で、国際的に活躍する2人の巨匠と並び立ち、本気度の高さを見せつけた。

 新ホテルは有名建築家の隈研吾氏が設計し、ホテルで提供される料理の監修は人気シェフの奥田政行氏(鶴岡市出身)が担う。2人の知名度も生かして「世界水準」を狙い、集客を伸ばしたい考えだ。

 旧施設の浴場やプールを巡っては今後、活用の詳細が固まる。四季南陽の担当者は「売り上げの見通しや設備の修繕費など、さまざまな試算を踏まえて決めたい」と慎重に構える。

 奥山氏は記者発表で、決意をこう言い表した。「造ることが最終目的じゃない。きちんと運営し、収益を出し、後世に残る施設にする」。一度閉ざされた施設を継ぐ者として、教訓をかみしめつつ歩む。

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