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Friday, December 3, 2021

社説(12/4):沖縄県の変更不承認/「辺野古」見直しへ対話を - 河北新報オンライン

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画を巡り、防衛省が申請した設計変更を県が不承認とした。

 埋め立て予定海域に広がる軟弱地盤を改良するための設計変更だったが、玉城デニー知事は海洋調査や環境保全策が不十分と判断した。

 工事計画については、米国の保守系シンクタンクも昨年11月の報告書で「完成する可能性は低い」と指摘した。もはや普天間飛行場が担っている安全保障上の役割をどう代替するかといった議論以前の問題だろう。

 計画に固執する政府は、妥当性を裏付ける詳しいデータを示していない。玉城知事が「完成の見通しが立たず、事実上、無意味な工事をこれ以上継続することは許されない」と批判するのも当然だ。

 政府はこれまでの強権的な対応を改め、工事計画を見直し、具体的な基地負担の軽減に踏み出すべきだ。

 「マヨネーズ並み」とも言われる軟弱地盤は、最も深い場所で水面下90メートルまで続いていることを示すデータがある。だが、工事計画は70メートルまでとされており、その根拠となる詳細な調査結果は明らかにされていない。

 計画では約7万本のくいを打ち込む必要があるため、総工費は当初の3倍近い9300億円に膨らむ。難工事は必至で、対応できる国内の船舶も乏しい。工期は9年3カ月より長引き、工費もさらに高騰する懸念が拭えない。

 仮に完成しても運用後に地盤沈下し、米側の負担で数回の補修工事が必要になるとの見方もある。付近に生息するジュゴンやサンゴへの影響なども踏まえ、米議会にも辺野古での基地建設に懐疑的な声があるという。

 政府は変更承認の不要な区域で工事を続けながら、行政不服審査請求や違法確認訴訟で対抗する構えで、県と話し合う気はなさそうだ。移設計画を巡る訴訟は政府の勝訴が続いており、今回も押し通せるとの判断だろう。

 しかし、仮に政府が勝訴したとしても、米軍による使用開始は政府側の試算でも裁判が決着した時点から12年以上先になる。

 その間、移設計画の原点だった「普天間の危険」は除去されないばかりか、沖縄の基地負担軽減に向けた歩みにも重い足かせとなる。

 2013年に当時の仲井真弘多知事が辺野古の埋め立てを承認して以来、安倍・菅両政権は県民投票などで繰り返し示された反対の民意を無視して工事を進めてきた。

 岸田文雄政権も「辺野古移設が唯一の解決策」(松野博一官房長官)との姿勢だ。最も必要とされている局面でも「聞く力」が発揮される気配はない。

 普天間返還の日米合意から25年が経過する。政府は、辺野古に固執する限り好転しない現実を直視すべきだろう。

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