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Friday, April 9, 2021

ストレステストとは何か?金融機関での具体的な方法とは?日銀が行うテストも紹介 - ビジネス+IT

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景気悪化などを想定してストレステストが行われる

(Photo/Getty Images)


ストレステストとは

 「ストレステスト」という用語は、金融のみならずITや原子力発電などあらゆる分野で用いられている言葉だ。この記事では、金融の分野にフォーカスしてストレステストの概要を解説していく。

 金融機関が行うストレステストとは、金融市場で不測の事態が生じた場合(シナリオ)を想定し、あらかじめ影響や損失をシミュレーションすることである。自然災害や株価の暴落、金融市場における流動性の低下など、ストレステストで想定する事態は多岐にわたる。

・ストレステストの目的・メリット
 ストレステストの目的は、生じ得るリスクや損失を定量化し、被害を事前に予測して対策を講じることだ。発生可能性が高い事態を想定したうえでリスクや損失を可視化するため、「銀行が安全に業務を継続できるかどうか」を的確に分析することができる。

 また、あらかじめ必要な対策を講じることで、甚大な損失を被ったり事業が停止したりする事態を未然に回避できる点もメリットだ。

・欧米や日本におけるストレステストの取り組み状況
 ストレステストに積極的に取り組んでいるのが欧米諸国だ。リーマンショックによる金融危機が生じて以降、欧米ではストレステストの重要性が高まっている。たとえば、米国では、金融危機の経験を踏まえて制定されたドッド・フランク法に基づき、FRB(米連邦準備理事会)が大規模な銀行に対して、一斉ストレステストを毎年実施、銀行ごとに結果を公表している。

 また、イギリスでも米国と同様に、大規模な銀行に対する一斉ストレステストを毎年行い、銀行ごとに結果を公表。さらに、欧米ではストレステストの結果に基づいて追加的な資本バッファーを賦課するなど、結果を規制につなげる取り組みも進められているのが特徴だ。

 一方、日本でも日本銀行(以下、日銀)や金融庁、個々の銀行が主体的にストレステストを実施している。たとえば日銀では、独自のストレステストを毎年実施し、その結果を「金融システムレポート」という形で公表している。

 ただし、欧米とは異なり日本ではストレステストの結果が各種の規制に用いられる取り組みは行われていないのが現状だ。

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欧米では毎年、大規模なストレステストを一斉実施している

(Photo/Getty Images)


ストレステストの方法

 ストレステストの方法に明確な決まりはないものの、大まかな流れは実施する機関に関係なく同じである。ここでは、2019年度に日銀と金融庁が共同で行った共通ストレステストを参考に、一般的なストレステストの方法を流れに沿って解説していく。

・手順1:想定されるストレスの洗い出し
 はじめに、金融システムや各金融機関の経営に重大な影響を及ぼすと想定されるストレスを洗い出す。具体的には、「大幅な経済状況の悪化」「債券価格の下落」などが銀行の経営や業績にネガティブな影響を与える要素として挙げられる。

 ストレスを洗い出す際に意識すべきポイントは2つ。1つ目は、過去に生じた重大な事例を参考にすることである。具体的には、 VaRショックやリーマンショックなどが該当する。2つ目は、各銀行の事業内容や直近の経済状況などを想定することだ。

 過去の事例のみならず、各銀行や現在の状況も考慮して、多面的な視点でストレスを洗い出すことが重要である。

【次ページ】日銀が行うストレステストの分析結果を見れば日本の金融システムが分かる

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