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Thursday, April 22, 2021

映画「るろうに剣心」シリーズついに完結! 大友啓史監督が語る「最終章」 - GQ Japan

『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』

スタッフの“念”がこもったラスト2部作

第1作『るろうに剣心』が公開されたのは2012年8月。日本のアクション映画の水準を塗り替えた人気シリーズが、10年近くの歳月を経てついに完結を迎える。4月上旬、シリーズ全作の監督・脚本(共同脚本を含む)を務めた大友啓史監督に、完結にあたっての感慨を聞いてみると──

「まだ終わったという感じがしないんです。「るろうに剣心」のシリーズは、とにかくお客さんに楽しんでもらいたいという思いで作っているので、観てもらって初めて完成するという意識なんです。お客さんのリアクションを見ないと、まだ感慨に浸れない。去年の夏公開するはずだったのが延期になって、そのあいだずいぶんフラストレーションがたまっていました」

大友啓史監督

今回公開される「最終章」は2部作になっていて、『るろうに剣心 最終章 The Final』が4月23日、『るろうに剣心 最終章 The Beginning』は6月4日の公開。『The Final』で主人公・緋村剣心は深い因縁の相手と対決し、『The Beginning』で時代は一転幕末へとさかのぼる。これら2作によって、剣心の頬に刻まれた「十字傷の謎」が明らかとなる。

シリーズ前作の『るろうに剣心 京都大火編』と『伝説の最期編』も、2014年8月・9月の連続公開だった。しかし、これら2本が物語の内容的に連続していたのに対し、今回の2本は時代がそれぞれ明治と幕末、作品がまとう雰囲気もまったく違う。怒涛のアクションシーンが次々と繰り広げられ、色彩も華やかな『The Final』に対し、『The Beginning』は抑えた色調の静謐な画面で、登場人物の内面へと深く分け入っていく。にもかかわらずこの対照的な2本は、完全に同時進行で撮影されたのだという。

東京の神谷道場に居候しながら、斬れない刀〈逆刃刀(さかばとう)〉で人々を助ける剣客、緋村剣心(佐藤健/中央)

「『The Final』の脚本を完本にしたあと2018年の11月、12月に撮影。そのあいだに『The Beginning』の脚本も書く。2019年の1月から『The Beginning』の撮影を始めて、並行して『The Final』のロケハンや衣裳合わせ。それから『The Final』の撮影に戻る。その繰り返しの7カ月間でした。時代も登場人物もまったく別々だから、ロケハンや衣裳合わせの手数も倍になります。撮休になっても僕は休みがない。その点は主役の佐藤健も同じでしたけれどね。彼の撮休日はアクション練習だった。

とはいえ、映画にはよくあることですが、いいコンディションでみんなが気持ちよく撮ったからといって、いい映画になるかというとそうでもない。たぶん「念」みたいなものが映画には残るんですよ。たいへんなスケジュールだったことも含め、必死で取り組んだスタッフひとりひとりの念みたいなものが、今回の2部作にはぎゅっと詰まっているのだと思います」

剣心の〈十字傷の謎〉を知る男、雪代縁(新田真剣佑)

世界最高のチームとのアクションシーンは必見!

『The Final』と『The Beginning』の2本を、筆者は「すごく体力のある映画」と呼んでいるのだが、現場で文字どおり全員の力が絞り出されていたということになろうか。困難を乗り越え、フィナーレにふさわしいこのゴージャスな2本が誕生したのは、シリーズを通じてつちかわれ、鍛え上げられてきた、スタッフの力とチームワークがあってこそだった。

「僕は「餅は餅屋」という考えで、最初に方針を示すと、あとはカメラにもアクションの振付けにも基本的に細かい口出しはしません。コンテも割りませんしね。監督ってほんとうは、画角決めたりレンズ決めたり、全部ひとりでやりたい人種なんですよ。でもそれをやっていたらいつまで経っても撮りきれない。そこで、スタッフがいかに僕の意図を汲んで、自由に動いてくれるかが大事になる。うちのチームは全員が自由自在にアメーバのように動いています。僕にとってはスタッフひとりひとりが、職人とか技術者とかではなく、大切なアーティストなんです」

新田真剣佑の並外れた身体能力と列車内外の空間とを駆使したアクションシーンで、開巻いきなり観る者の度肝を抜く『The Final』は、まぎれもなく世界トップレベルのアクションシーンのつるべ打ちだ。アクション演出はもちろん、第1作からシリーズを支えてきた谷垣健治。言うまでもなく、ドニー・イェンのもとから出発し、いまや世界的に活躍するアクション監督である。

「黒澤明監督は『七人の侍』について、「ビフテキの上にバターを塗って蒲焼きを載せたような」映画を撮りたかったと言っていましたよね。僕は『るろうに剣心』の第1作で、そこにさらにフカヒレも載せてみたんです。香港流にね。

『るろうに剣心 最終章 The Final』より

90年代後半、アメリカに留学して映画製作を学んでいたころ、チャイナタウンの店で借りてきた香港映画のビデオを見ると、谷垣健治という日本人の名前が出ていました。それで記憶に残っていた。その後も谷垣さんは、僕も大好きな香港映画の世界で着実にキャリアを積み重ねていった。面白いコラボになりそうだと思って、第1作のときに谷垣さんに来てもらいました。

彼が率いる「るろ剣」のアクションチームを、僕はほんとうに世界最高峰だと思っています。脚本をしっかり読み解いて、シチュエーションに合ったアクション、登場人物の感情が見えるアクションを作ってくれる。アクション屋というだけじゃなくて、映画的な教養もありますから。ベースとなる動きは、僕と谷垣さんで決めた指針に基づき、アクションチームと佐藤健とで練習しながら作り上げていきます。前回までは練習の場にぼくも立ち会えたのですが、今回は時間がなかったので、動画を送ってもらってやり取りしながら完成するというかたちになりました。

『るろうに剣心 最終章 The Final』より

美術や衣装メイクチームの貢献も大きいです。アクションしやすいように用意されたわけではない空間で展開されることに、『るろうに剣心』のアクションの面白さがある。今回もアクションシーンのために面白い空間を作ってくれたし、動きになじむ素晴らしい衣装を用意してくれました。

アクションの速さは実際にあのとおりです。見え方が現実と少し違うとすれば、シャッタースピードのせいでしょう。速く見せたいというのではなく、アクションがお客さんの目に見えるようにという意志で撮っています。ぜひ何度もご覧になってみてください。僕たちも、編集しながら慣れてきてようやくわかる動きがあるくらいです。アクションの設定はすべての攻守が合理的で、無駄な動きがないからすごいですよ」

【後篇につづく】

『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』

The Final 2021年4月23日(金)/The Beginning 2021年6月4日(金)
2作連続ロードショー
配給: ワーナー・ブラザース映画
©和月伸宏/集英社 ©2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会
オフィシャルサイト: rurouni-kenshin.jp
公式Twitter/公式Instagram: @ruroken_movie

大友啓史(おおとも けいし)

1966年岩手県盛岡市生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。90年NHK入局、秋田放送局を経て、97年から2年間L.A.に留学、ハリウッドにて脚本や映像演出に関わることを学ぶ。帰国後、連続テレビ小説『ちゅらさん』シリーズ、『深く潜れ』『ハゲタカ』『白洲次郎』、大河ドラマ『龍馬伝』等の演出、映画『ハゲタカ』(09年)監督を務める。2011年4月NHK退局、株式会社大友啓史事務所を設立。同年、ワーナー・ブラザースと日本人初の複数本監督契約を締結する。『るろうに剣心』(12)『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』(14)が大ヒットを記録。『プラチナデータ』(13)、『秘密 THE TOP SECRET』(16)、『ミュージアム』(16)、『3月のライオン』二部作(17)、『億男』(18)など話題作を次々と手がける。2020年2月14日に『影裏』が劇場公開された。

篠儀直子(しのぎ なおこ)
PROFILE
翻訳者。映画批評も手がける。翻訳書は『フレッド・アステア自伝』『エドワード・ヤン』(以上青土社)『ウェス・アンダーソンの世界 グランド・ブダペスト・ホテル』(DU BOOKS)『SF映画のタイポグラフィとデザイン』(フィルムアート社)など。

写真・井上佐由紀

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