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Wednesday, February 19, 2020

スタートアップの評価額を上げる「プレミアム」とは何か - THE BRIDGE,Inc. / 株式会社THE BRIDGE

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YJキャピタル(ヤフーのベンチャーキャピタル)の堀です。今日のテーマは、スタートアップとバリュエーションについてです。起業家の皆さんが自社のバリュエーションをどうやって高め、その高さをどう投資家にプレゼンしたら良いか、について共有いたします。

事の発端は、2019年9月に連続投稿したTweetです。今、B2B SaaS業界でトキメイているSmart HR宮田(昇始)さんにブログ化のリクエストをいただいたんですね。筆遅の私、ようやく腰を上げました。

突然ですが、バリュエーションが高いことって、悪なんでしょうか?

<参考記事>

昨年、ベンチャーキャピタルのCoral Capitalさんがコーポレートブログで、高すぎるバリュエーションでの資金調達に警鐘を鳴らしました。ブログによると

【メリット】
 ・希薄化を抑えた調達が可能
【デメリット】
 ・次のラウンドの資金調達の難易度が上がる
 ・M&A Exitの難易度が上がる

ということです。仰る通りでございますです。バリュエーション上げすぎると色々と問題も出ますね〜。でもでもですよ、メリットもありますよね。同じ10%の希薄化でも、バリュエーションが30億円の会社と300億円の会社では、調達額が3億円と30億円と変わってきちゃうんですから。

私のお仕事はベンチャーキャピタルといって、スタートアップに投資し、将来出資した株式を売却することで、株価の上昇分のリターン(キャピタルゲイン)で儲けるのを生業にしています。

投資家が数人集まってお茶したり、鍋つついたりすれば、二言目には「最近どう?バリュエーション高くない?」って話になります。投資家は先に書いたようにキャピタルゲインで生計を立てる商売です。キャピタルゲインは「出口の値段(売却時の株価)ー入り口(投資時の株価)の値段」で算出されます。入り口の値段を避けたいバイアスが常にかかっているので、先の発言が出てくるわけです。

極めて投資家っぽい書き方をすると、入り口の値段を可能な限り抑えて、出口の値段を可能な限り高くして売り抜けたいと考えます。そういう生き物なんです。起業家の皆さんが死ぬ思いしてプロダクト作って、必死の思いでユーザー獲得していても、投資家の頭の中は常に「入り口」「出口」です。残念なことに。どんなに綺麗なことをブログに書いていても、「入り口」と「出口」です。もう一回書きますよ。あ、もういいですね。はい、ごめんなさい。

そんな僕ら投資家でも、今から書く内容を押さえていれば、「ん?待てよ。高くないかも。投資した方が絶対良いよ」って思うポイントがあります。今日はそのポイントを書いちゃいます。みんなには内緒ですよ。

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1.プレミアムを説明しよう

バリュエーションを高くするためには、平均より高い理由、すなわちどういったプレミアムが乗っているかを説明しましょう。投資家は常に、証券市場の平均値と比較します。平均より何が優れているのか説明出来ないと「平均ですね」で片付けられてしまいます。腹落ち出来る説明がなければ、流動性の高い上場株を買った方がキャピタルゲインが望めるからです。

2.プレミアムは3種類ある

プレミアムとはなんぞや、と。平均より何が優れているとプレミアムと呼んで良いのでしょうか。未上場のスタートアップが上場企業と売上を比較しても簡単に勝てませんね。

投資家に対してスタートアップが使えるプレミアムはいくつかあると思うのですが、私のお気に入りを紹介します。

a) マーケットシェア1位

マーケットシェア1位です。業界ナンバー1なんです。これは圧倒的に強いですね。1位の会社にはプレミアム感が付いてきます。投資家殺しです。シェア1位の会社に投資する機会ってあまり巡ってきません。シェア1位を説明する上で、マーケットの定義、すなわちセグメンテーションについて学んでおくと良いでしょう。

弊社の戦っているマーケットは国内小売市場134兆円!って説明する起業家の方がたまーにいらっしゃいますが、こういう解像度が粗いプレゼンをすると投資家はシラーっとなって、プレゼンの最中でもFacebookやTwitterを開いて別のこと始めてしまいます。

いったいぜんたい、そのどデカイ市場でどのセグメントを狙っているんだい?ってプレゼンを聞いてる投資家は思いを巡らせます。ビューティー市場を見ても、女性/男性、年齢、基礎化粧品/メイクアップ、売り場(オンライン、オフラインチャネル)とセグメンテーション(細分化)が可能です。

市場が大きい時こそ、セグメンテーションをしっかりと行い、ターゲット顧客が誰なのかを明確にして、顕在市場規模を説明出来るようにしましょう。

どこかのセグメントで1位だと投資家は興奮します。

さらに、そのセグメントが業界全体で成長中だと投資家はもっと興奮しちゃいます。衰退市場で戦っている人は、市場が縮小していても気にしないこと。自社のシェアが市場縮小率を気にしないぐらい成長していることを説明できれば問題ないです。逆に、衰退市場で自社のシェアが横ばいだと、そのうちなくなっちゃうからマズいですね。

3年後、隣の顧客セグメントに参入します!(例:アパレルから消費財)というような起業家の話、投資家は眉唾で聞いています。実績が全て。実績や裏付けのない「将来、こうなります!」っていう話は投資家は「そうね。素晴らしいね」と言いながら聞き流しているのが本音です。

シェア1位の話長くなりすぎました(笑)ただ、私もソフトバンクグループの端くれとして仕事していて感じることですが、孫総帥はシェア1位が大好きだと思います。シェア1位と聞くと、身を乗り出して話を聞き入っているようなイメージがあります。

マーケットの捉え方、セグメンテーション、シェアをとにかく抑えに行く。

これ、テスト出ます。

b) 凄まじい成長率

この成長、やばくないっすか?って感じで右肩上がりのグラフを見せられると投資家は目がクラクラします。Y CombinatorのDemo Dayやピッチコンテストで必ず入れろ、って言われるスライドですね。

今、僕たちを捕まえておかないと乗り遅れるよ!っていうメッセージ力があります。やばくない?っていう成長率が良いですね。1カ月で10倍成長しました、とか最高です。

成長率を作るために広告燃やしまくるという手法があります。これはよろしくないですね。投資家はすぐ見抜きます。資金調達するために強引に右肩上がりの成長率を作ってきたな、と。

ユニットエコノミクスが証明出来ている(別の言い方だと、どんなに燃やしても回収可能、すごく儲かっちゃう)ならオッケーです。広告燃やさずに、顧客獲得ハックしている企業だと、投資家はヨダレをたらしながら飛びつきます。

ハック、で思い出しましたが、YJキャピタル支援先のKaizen Platformの須藤(憲司)社長が近々ハック思考について出版されるので、皆さんぜひハック思考を読んでマスターして下さい。

成長率も、市場平均より高い水準で成長していることが証明出来ると高く評価されます。EC市場が毎年約9%成長しているなら、少なくとも10%以上の成長はしたいですよね。業界の雄のEC事業者が毎年30%成長しているなら、60〜100%成長したいですよね。そうすると、「すげえ」ってなりますよね。

c) KPIの異常値を作る

最後のプレミアムは「異常値」です。競合他社と比べてCVRやCPAが10倍パフォーマンスが高いんです、という異常値です。

この状態を実現できていると、本日時点ではGMV(流通総額)やPV(PageView)で負けてるけど、数年後には競合を追い越せるやん!ってなります。「ふむふむ。ということは、数年後には将来の勝ち馬になるから、短期的に今バリュエーションが高くても、今乗っておいた方が良いわな」ってなります。

異常値を作ればいいんだ!ってのは分かりやすく伝えているだけであり、本質的には利益率、収益性のお話です。別の言い方をすると、平均的なビジネスモデルよりも、僕のビジネスモデルの方が明らかに儲かる、利益率が高いんです、ってことが言えれば投資家はめちゃんこ高く評価してくれます。

利益率を高くするには、いくつかコツがあって、競合サービスの平均値よりも

1.顧客単価を上げる
2.粗利を上げる(売上原価を下げる)
3.顧客獲得コストを下げる
4.リピート率を上げる
5.オペレーションコストを下げる

ことが出来れば実現可能ですね。この中のどれかで異常値を作ることをお勧めします。10倍近く平均との乖離があると完璧です。言うは易し、行うは難しです。

番外編)チーム

3つのプレミアムについてツラツラ書いてきました。番外編として、2度と使えない、1回しか使えないマジックプレミアムを紹介します(笑)

それは、「チーム」です。この面子でこの事業に挑戦するのすごくない?やばくない?超絶凄いっしょ、ってやつです。

これ、次の資金調達の時に使うと「いや、それ、君、前回も言ってたから」って冷静に投資家からツッコミをくらっちゃいます。しかも、前回よりも今回のタイミングで、業績やKPIで成長していないと「結局チームは凄いけど結果が出せない連中だよね。経歴は凄いんだけどね」って片付けられてしまいます。なので、個人的には、チームは”Nice to Have”ぐらいにしておくのが良いと思っています。実績で勝負するのが王道です。これ、気をつけてな!

結局、高いものには理由がないと、ヒトは買わない(投資しない)んですね。メルセデスやエルメスを買っている人いるじゃないですか。別にスズキやユニクロでもいいわけです。お金があるから買ってるわけじゃなく、買いたい理由があって、購入者が納得して買っているわけですよね。格好いいから、可愛いから、とか。

投資家も一緒なんです。

なので、プレミアムがある、と言う必要があります。在庫に限りがある限定品なんです、という見せ方をしないといけないんです。昭和の時代のドラクエであり、平成の時代のポケモンであり、令和の時代のスニーカーのように。

このジーンズ、岡山のXX工房とイタリアの巨匠のYYとNYのSupremeが3年構想してデザインした世界限定100本しかなくて、テルマさんも愛用している超限定品なんですよ、というプレゼンテーションしないといけないんです。

実績が伴わないのにバリュエーションが高い状況はよろしくないです。ただ、投資家を相手に株の取引をするのであれば、売り手としてのセールストークというか、買いたいと思わせるポイントは抑えたほうが良いですよね。

だいぶ長いブログになってしまいました(笑)一緒に事業づくり、バリュエーションをより高いところに持っていきたいという起業家の皆さん、ご連絡お待ちしています。どうやったら企業価値を高めていけるのか、色々アドバイスします。

見せかけだけじゃん、って言われないように、しっかりと事業を作り込んでいきましょう。そして、相談に乗ったYJキャピタルには特別にバリュエーシションを低く提示してください(爆)!

共に、未来を創ろう!

<参考記事>

本稿はベンチャーキャピタル「YJキャピタル」パートナーで代表取締役社長の堀新一郎氏によるもの。同氏に許諾をもらってnoteに掲載された記事を転載させていただいた。Twitterアカウントは@horrrrry。創業期からシリーズA達成を支援するプログラムCode Republic(コードリパブリック)では第7期を募集中

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