JR西日本は11日、乗客106人が死亡した2005年の尼崎JR脱線事故の遺族と負傷者向けの説明会を宝塚市内で開いた。大阪府吹田市の社員研修センターの隣で整備している事故車両の保存施設について、25年12月ごろの完成を目指す方針を明らかにした。JR西は当初、24年秋の完成予定と公表していたが、遺族や負傷者の要望を踏まえた結果、設計変更の必要が生じたため、昨年11月の説明会で1年程度遅れる見通しを示していた。
説明会は非公開で開催。オンラインで川西、伊丹、三田市内の別会場でも中継し、4会場で計86人が参加した。
保存施設は地下1階、地上1階の2層構造で、事故車両は地上1階で保存する。7両編成のうち損傷が激しく復元が困難な1~4両目は、車両ごとに座席、つり革、屋根といった部品を整理し、車内と車外に分けて配置する。損傷前の状態が分かる写真も添える。原形をとどめる5~7両目は連結した元の状態のまま展示する。
地下1階では事故現場を再現する。事故の痕跡が残るレールや枕木、電柱の現物のほか、車両が衝突したマンションの一部を実寸大で再現して製作。衝突の写真を実寸大で大型スクリーンに投影するという。
また、施設では遺留品の一部を保管。事故の救助活動に携わった警察、消防関係者らに寄せてもらう手記とともに、社員教育に活用するという。今年2月に着工した。
説明会後、JR西の長谷川一明社長が会見した。遺族間でも賛否が分かれる車両保存施設の一般公開や事故現場での車両保存について、この日の説明会でも実現を求める意見が出たとした上で「現時点では判断できず、今後の課題だ」と従来の見解を繰り返した。12日も同様の説明会を開く。
事故で妻の節香さん=当時(63)=を亡くした西宮市の西野道晴さん(83)は説明会後、事故当時とJR西幹部らの顔触れが変わったことに改めて触れながら「18年たってもやりきれない気持ちの遺族や負傷者がいる。企業としてきちんと説明を尽くしながら、二度と事故を起こさない努力を続けてほしい」と話した。(大田将之、大島光貴、鈴木雅之)
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