【三重】東京のIT会社社長、後久(ごきゅう)和宏さん(46)がふるさとの津市で、プリンの製造・販売会社「プリンタイム」を設立した。地元の食材を主に活用し、体にやさしい味を大切にした40種類以上のオリジナルレシピを完成するまでに約2年費やした。頼りになったのは、最先端のITではなく、主婦らのアイデアだった。
後久さんは津市出身で大阪大学大学院修了。2006年、市場調査などのITシステムを開発する会社を東京で起こした。1千社以上にサービスを提供し、業績は順調だった。17年にシンガポールに支社を設けたが、価格競争で苦戦し、現地から撤退した。
帰国すると新型コロナウイルスが流行し、東京の社員をリモート勤務とし、自分も帰郷した。地元の果物や野菜をおいしいと感じた。シンガポールで家族と食べた豆乳プリンの「あっさりしたやさしい味」が忘れられず、「地元の食材を使ったプリンで商売ができないか」と思いついた。
21年夏ごろから半年間、自宅でプリンを試作した。しかし門外漢なだけに行き詰まった。
「お菓子作りが好きな方を募集。プリン専門店を開きたいのでアイデアをください」
22年1、2月にネットでスタッフを募集。洋菓子店で職人として働いた経験者を含む20~50代の津市の主婦3人と、事務所で新しいプリンの試作に挑んだ。
トウモロコシ、ホウレンソウ、ブロッコリー、バナナ、トマト……。思いつくまま食材を集め、加工の仕方にもアイデアを出し合った。冷蔵して、翌日みんなで試食し、話し合った。甘くなり過ぎて食材の味が生きていない、デザートというより離乳食やおかずみたい、きれいな色が出ないなど、多くは失敗した。
メンバーは四季を通して研究を重ね、料理研究家からも助言を受け、マイヤーレモンやユズ、イチゴ、お茶、大葉、小松菜、シソ、安納芋、ニンジンなどを使った40種類以上のレシピが完成した。1種類完成させるのに20~30回は試作したという。ヒジキが意外にプリンに合うこともわかった。
健康を気にする人やお年寄りにも食べてほしいという思いから、食材はできるだけ県内から直接仕入れる。甘さは控えめで、保存料や着色料は使わない。「捨てやすい」という意見を採り入れて紙カップも用意した。
こうして今年8月、津市柳山津興でテイクアウト専門店を開いた。予約サイトや生産管理システムは本業の強みを生かしている。
メンバーは完成までの過程を「楽しかった」と口をそろえる。後久さんは「IT開発とは違う喜びです。生産者に対する責任も感じるが、これからも新商品作りに挑み、三重県発のプリンを全国に広めたい」と張り切っている。
店では異国風も含めて一部日替わりで1日5~8種類ずつ販売している。1個税込み370円から。火曜日定休。(高田誠)
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