テントシートを空気で膨らませ、その内側に断熱用のウレタンを吹き付ければ4時間以内に完成する住宅がある。LIFULL ArchiTech(ライフル アーキテック、千代田区)が開発した「インスタントハウス」だ。その使い道への期待が大きく膨らんでいる。(押川恵理子)
2月の大地震による避難生活が続くトルコ南部のアンタキヤで4月中旬、インスタントハウス3棟が設置された。日中の暑さやヘビの侵入に悩んでいた現地の女性は「涼しいし、安心して眠れる」と喜んだ。厚さ10センチのウレタンによって夏は涼しく、冬は暖かい。耐震性や耐風性も備える。
価格はサイズで違い1棟110万円~258万円。今回は被災地を支援する日本の非政府組織(NGO)が購入し、トルコ側に寄贈した。現地で施工を指導した同社の代表取締役COO(最高執行責任者)の幸田泰尚さん(43)は「資材や施工スタッフを現地で集めればコストも下がり、被災地の雇用創出にもつながる」と手応えを語る。
日本ではキャンプ施設での導入が多く、被災地での設置は初めて。最近、問い合わせが増えているのがサバなどの陸上養殖での活用だ。ビニールハウスに比べて温度管理の費用が安く済むからだ。エネルギー使用量が抑えられ、二酸化炭素排出量を削減できる。「持続可能性のある食料生産のインフラにつなげたい」と幸田さん。
目標は大きく、「人類の持続性を高める」ことだ。送電線やガス管などとつなげず、再生可能エネルギーで快適に暮らす「オフグリッド」の実証実験も続けている。
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