千曲市のシャツ製造会社「フレックスジャパン」は福島県双葉町で今年7月、使われなくなった衣料のリメイクなどを手がける「ひなた工房」を開業する。東京電力福島第一原発事故からの復興が進む土地で、新事業を通した「思い出の再生」に取り組む。(村上愛衣)
福島第一原発が立地する双葉町は東日本大震災から約11年半にわたり全町避難が続いたが、昨年8月末に帰還困難区域の避難指示が一部解除された。
工房が新設されるのは、福島第一原発から北に約4キロの「中野地区復興産業拠点」の一角。優先的に除染を進める区域として整備されてきた場所で、除染や解体などに関わる土木建設業や、中間貯蔵施設関連など24社が立地を決め、既に18社が操業している。製造業はフレックスジャパンを含めて5社だが、同町は今後、除染作業などの完了が見込まれるとして、製造業をはじめとした労働集約型の企業などの誘致を目指している。
工房では、傷んだり使われなくなったりした衣類を再生させる新たな事業を計画している。「リステッチ」と呼ばれ、思い出の服をテディベア用にリメイクすることや、シャツの襟や袖の交換、子どもが描いた絵の刺しゅうなどのサービスを提供する。
以前から服の廃棄に抵抗感があった社長の矢島隆生さん(63)は「着用することで、服には思い出が染みつく。捨てないですむ方法はないか……」と、衣料品再生の事業化を模索していたが、手がかりをつかみかねていた。そんな時に出席した会議で経済産業省の職員に勧められ、2020年9月に初めて同町を訪れた。
震災から10年が経過しようとしている中で、津波や地震で壊れた家屋がそのまま残されていた。震災の爪痕が残る光景を目の当たりにして、何かできることはないかと思いつつも、その余力がない。だが、原発事故からの復興を目指す双葉町の姿と、衣料品の再生事業を重ね合わせ、「衣料品に染みついた記憶や思い出を再生する事業ができるかもしれない」と思い立った。
伊沢史朗町長も快諾したことから、進出を決断。21年4月に双葉町と企業立地協定を締結し、昨年11月には工房や隣接する店舗の工事が始まった。今年6月に完成する予定で、新たに5人前後を雇用する見込みだ。
工房新設に先立ち、21年秋にはオンラインなどで先行して注文を受け入れてきた。亡き夫の服をテディベア用にリメイクした女性からは「毎日そばに居てくれるようで本当にいとおしい」との感想を寄せられた。写真が少なく思い出が色あせることが心配だったという。
「再生の象徴といえる双葉町で、事業を拡大させたい」と力を込める矢島さん。この町とともに新たな一歩を踏み出す。
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