2021年02月14日09時00分
◆感性リサーチ代表取締役・黒川 伊保子◆
男女では、「提案」に対するセンスが違う。最近、つくづくそう思う。
例えば、「○○食べない?」という女性の提案を受け入れられないとき、男性の多くが、その提案に反論してくる。「○○は、□□だからダメ」というように。
妻「カルボナーラ食べない?」
夫「重いなあ、最近疲れてるんだよ、勘弁してくれ」
これは実際に、わが家で交わされた会話である。気心の知れた女友達だったら、絶対こんなことはしない。
「カルボナーラ? いいわね、まったりしてて…ああ、でも今は、そばの気分かな。おいしい鳥おろしそばの店があるの。あなたに食べさせたくて」なんて返してくれるはず。
◆おもてなし返し
提案に反論を真正面から打ち返さない。これは、何万年も女同士の連携で子育てをしてきた女性脳の基本機能だ。「カルボナーラは嫌いなの、ごめん」はあり。個人の感想だから、相手を否定していない。
「カルボナーラは、ダメな提案」という、まるで客観的な裁定を下すかのような、男性たちの言いぶりが問題なのだ。
おそらく、男性にとって提案とは、自分の考えを相手に提示し、相手がくみするかどうかを測るものなのだろう。反論するならよほどの理由がなきゃと思い込み、客観性のある反論をしたがる。
一方、女性にとって提案とは、「おもてなし」なのである。相手に、「こんなアイデアがあるの。あなたに、よくなってほしい気持ちがある」というアピールなのだ。だから、「いいね」で受けて、「おもてなし返し」をするのが礼儀なのである。
というわけで、女性と食事の話をするのに「ノーアイデア」でいてはいけない。デートに誘うのに「何、食べたい?」なんて言語道断。「君に食べさせたい○○がある」「連れて行きたい○○がある」と言わなきゃ。
在宅夫婦もご用心。毎日「お昼はどうする?」なんて聞いていると、夫婦の間がぎくしゃくしてくる。
ときには、「そばにする? お湯、沸かそうか」「冷凍ピザ、焼く?」「散歩がてら、弁当買ってこようか」と提案から入ろう。
◆「いいね」ボタンの影響
そして、部下から上がってくる提案も、まずは「いいね」で受けること。男性は「いいね」は成果に言うものだと思い込んでいるけど、女性はプロセスも評価する。
提案そのものはダメでも、「いいところに気付いたね」「やる気あるね」「発想が豊かだね」など、褒めることが必ずあるはず。部下の提案は、必ず「いいね」で受けると腹を決めたらいい。
そうすれば、脳が、部下の提案の中から、何かいいところを見つけるモードに入る。「あの人は仕事には厳しいけれど、気持ちを分かってくれる人」と言われることになる。
これは、男性の部下にも効く。いきなりの否定に心が折れる男子も増えている。
理由は、おそらくインターネット交流サイト(SNS)の「いいね」ボタン。「いいね」で、コミュニケーションを柔らかくする癖がついているのではないだろうか。
そう、その「いいね」ボタンをリアルでも押そう! 家族や部下に、提案や嬉しかったことを告げられたら、「いいね」「よかったね」である。たとえ、道義上反論する必要があっても、その後に。
(時事通信社「コメントライナー」2021年2月14日号より)
【筆者紹介】
黒川 伊保子(くろかわ・いほこ) 14年にわたり人工知能(AI)開発に携わり、脳とことばを研究。世界初の語感分析法を開発し、マーケティングに新境地を開拓。脳科学で時代の気分を読み解く「感性アナリスト」の第一人者となった。男女脳のすれ違いを描く恋愛論も人気。2018年刊行の「妻のトリセツ」が話題に。ほかに「共感障害」「女の機嫌の直し方」など著書多数。
からの記事と詳細 ( 「提案」への反応、これを知っていれば何かが変わるかも【コメントライナー】 - 時事通信ニュース )
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