ものをつくることで 心動かす「何か」つかむ
[2021/02/06 10:00]
仕事として編み物をしていると、「いつから編み物をしているのですか。きっかけは」と、質問されることがあります。「いつからだっけ?」と考えるのですが、はっきりとした記憶はありません。
ただ、7~8歳くらいの時、あるいはもっと小さいころ、お正月に家族の集まる茶の間での出来事が思い当たります。祖父にテレビのチャンネル権を奪われました。吉良上野介がどうとか、赤穂浪士がなんだとか、当時の私には全く意味の分からないドラマに大人たちはくぎ付けです。
そんな大人たちを横目に、相手にしてもらえないつまらない気持ちを埋めるために、こたつの上に転がっていたかぎ針と毛糸を絡めながら簡単な鎖編みを始めたのがきっかけだった気がします。
何を編むわけではありませんでした。ただ、鎖編みで「ひも状の何か」を編むのです。そして、できた「何か」を使ってまた「太いひも状の何か」を編んでいきます。どんどん太く、大きくなる「何か」を編むことが楽しくて、その後何かを編むことがマイブームになっていました。
私のものづくりの原点だったのかもしれません。素晴らしい、美しい作品を作って完成を喜んだり、楽しんだりすることだけがものづくりではなく、自分の心を動かす「えたいのしれない何か」を作ることもものづくりであると考えます。
私は編み物によって心を動かされ、「つまらない正月休み」から「あっという間に時間が過ぎる正月休み」へと変わりました。この出来事がきっときっかけなのでしょう。
昨年からの自粛生活の中で商売をしていると、世知辛い世の中になってしまったと思う一方、自宅で過ごす時間が増え、これまでより何かを振り返ったり、冷静に物事を考える時間が増えました。
子ども時代のつまらない冬季休暇のもどかしさは今の自粛生活と重なる部分があります。先日、テレビで編み物を始める人が増えているという特集をしていました。
編み物はストレスを軽減する手法の一つです。同じ動作を繰り返すだけですが、確実に編んだ面積は広がります。たった1段でも1センチでもその日の成果がそこにあり、達成感を感じることができます。
マフラーやセーターを編まなくてもいいのです。私は「えたいのしれない何か」を編んで心に変化がありました。
「巣ごもり生活」という言葉を耳にするようになりました。巣ごもりしている時間でも自分の心や気持ちを楽しませてくれるのは、ほかの誰でもなく自分自身なのです。
自分の心を前向きにしてくれる「えたいのしれない何か」をものづくりで見つけてみてください。今は巣ごもりかもしれませんが、「何か」はその後の人生の喜びとをつなげてくれる「何か」になるかもしれませんね。
ニットカフェオーナー 新井ますみ 高崎市通町
【略歴】結婚を機に本県に移住。出産を経て、2017年に会社を立ち上げ、高崎市内にニットカフェ「アブサラクリコ高崎」をオープンした。茨城県出身。
2021/02/06掲載
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