九州電力は12日、原子力規制委員会が設置を義務づけたテロ対策施設の完成が期限に間に合わないため、16日午後に川内原発1号機（鹿児島県）の稼働を停止すると発表した。テロ対策施設が完成しないことを理由に原発が停止するのは初めて。同様の理由で、5月には川内2号機、8月以降は関西電力高浜原発3、4号機（福井県）が停止する予定で、原発を運営する電力大手にとって新たな経営リスクとなる。
規制委は、川内1号機のテロ対策施設完成期限を17日と定め、未完成の場合は稼働継続を認めない方針を示していた。18日午前0時までに原子炉を完全停止させる必要があることから、九電は16日の午後1時ごろ、制御棒を挿入して原子炉を停止させる予定。12月までに施設を完成させ、年末の再稼働を目指す方針だ。
テロ対策施設は「特定重大事故等対処施設」と呼ばれ、航空機などが故意に原発に衝突しても遠隔操作で原子炉の冷却などができるよう2013年に設置が義務づけられた。しかし、過去に設置事例がないことから規制委の審査が長期化。設置を進める電力3社が昨春、期限内に完成しない見通しを示したのに対し、規制委が期限延長を認めなかったことから、稼働停止が避けられなくなった。
九電は川内1、2号機をテロ対策施設が完成するまでの8～9カ月間止める方針で、主力電源である原発の長期停止は業績への大きな打撃となる。石炭や液化天然ガスによる火力発電で原発の停止分を補う結果、燃料費増加で連結経常利益ベースでは数百億円の下押し要因となる見込み。これに対し池辺和弘社長は現時点では、電気料金を値上げしない方針を示している。【高橋慶浩】
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