
生地に模様の輪郭を写し、糸のように細い線でのりを置く。「糸目のり置き」と呼ばれ、染色した際に隣り合う柄の色がにじまないようにする要の作業だ。さらに10色ほどの染料を混ぜ合わせて柄の中に色を付けた後、一気にはけで塗り上げる。その「
江戸時代に生み出された、日本を代表する染め工芸の一つ、「友禅染」。京都の友禅染は20以上の工程を分業して制作するのが一般的だが、デザインから仕上げまで全ての作業を一人でこなす。現代の生活になじむ新たな感性でその技を後世に伝えようと挑戦を続ける。
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京都市北区の閑静な住宅街に、拠点とする「染工房 正茂」がある。注文はオーダーメイド中心。客のイメージを丁寧に聞き取り、
友禅染の着物に
そうして訪れた就職説明会で運命的な出会いがあった。手描き友禅作家の重要無形文化財保持者(人間国宝)・羽田登喜男氏の弟子と知り合い、工房を見学。職人たちが下絵に沿って生地を染め、仕上げまでをこなしていた。その姿に引き込まれた。「下絵専門でできればと思っていた自分にとって、完成品のイメージがしやすい一貫作業は日本画の制作に通じるものがあった」
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修業期間は13年に及んだ。染色は完成するまで、どんな色になるかわからない。だからこそ出来上がりの濃淡を見て反省し、より美しい物を追求した。「あくなき挑戦。その感性を磨くには経験しかないと学んだ」と振り返る。
32歳で独立。だが、苦しい日々が続いた。府内の問屋を巡って売り込んでも「在庫は余るほどあるから」と取り合ってもらえない。ベテランの職人が多くいる京都で、自分の名を売ることの大変さを痛感した。仕事をもらえるようになるまで3年かかった。
しかし、その間も友禅染の技法を廃れさせてはいけないという強い危機感は薄れなかった。気軽に友禅染を楽しんでもらおうと、麻のストールづくりに挑戦。手描きならではの繊細さで草花や動物を表現した。「慌ただしい生活を送る人々が少しでもたおやかな気持ちになれるように」との願いを託した。
2013年には「京もの認定工芸士」に認定。工芸士らの活躍の場を広げようと努めるようにもなった。「伝統工芸品の存在を知ってもらって、初めて自分たち職人の存在を知ってもらえる。試行錯誤しつつ制作を続け、伝統を紡ぎたい」と力を込めた。(畝河内星麗)
◆うえなか・まさしげ 1972年、南区生まれ。昨年からは認定工芸士の若手有志でつくるグループ「響」の会長も務め、SNSなどで国内外への発信にも取り組む。工房は、公式サイト(https://www.uenakamasashige.com/)でも注文を受け付けている。
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