以前、このコラムにおいても今の中国を理解するうえで重要なキーワードとして「東数西算」プロジェクトを紹介したが、そのプロジェクトが確実に広がりを見せている。同プロジェクトは、新型の計算力ネットワークシステムを構築するもので、再生可能エネルギーが豊富にある西部に主にデータセンターを建設し、東部の計算力ニーズを引き受けるもの。プロジェクトは、今年2月に全面的にスタートしたが、それ以降、数多くのデータセンタープロジェクトが建設を始めたり、完成して業務を開始したりしているという。例えば甘粛省慶陽市では、敷地面積1.2ヘクタールのデータセンターの建設が急ピッチで進められている。また、大量の典型的応用シーンも生まれており、例えば貴州中雲データサービス有限公司が広東省深セン市にある瑞雲科技有限公司にクラウドストレージの支援を提供するようになった。「東数西算」プロジェクトはたくさんの新しい応用シーンをもたらし、計算力消費の時代を切り開いている。(日経BP 総合研究所)
今年2月に「東数西算」(東部地域のデータを西部地域で保存・計算すること)プロジェクトが全面的にスタートしてからの4ヶ月間に、数多くのデータセンタープロジェクトが建設を始めたり、完成して業務を開始したりし、全国で計算力の「1大ネットワーク」の構築が加速した。
データセンタープロジェクトが相次いで着工
「東数西算」プロジェクトが全面的にスタートすると、データセンターが1つ、また1つと誕生した。
6月10日、甘粛省慶陽市では、敷地面積1.2ヘクタールのデータセンターの建設が急ピッチで進められていた。これは中国移動通信集団慶陽支社が建設する甘粛モバイルグリーンデータセンタープロジェクトで、2023年末までに完成する予定だ。
「東数西算」プロジェクトの展開で、慶陽データセンタークラスターは国家データセンタークラスター10ヶ所のうちの1つと位置づけられる。完成すれば、2.5キロワット(KW)の標準ラック15万本が新たに設置され、情報インフラを下支えする能力とサービスレベルが大幅に向上する。
6月7日には、中国電信(チャイナ・テレコム)クラウドコンピューティング内蒙古(内モンゴル)自治区情報パークBエリアデータセンターの建設が、同自治区和林格爾(ホリンゴル)県で始まっていた。ホリンゴルデータセンタークラスターも国家データセンタークラスター10ヶ所のうちの1つだ。情報パークの総敷地面積は97.8ヘクタール、総投資額は173億元(1元は約20.4円)、計画ではデータセンターの建物42棟と関連施設19棟が建設され、ラック10万本以上の電源容量とサーバー100万台以上のクラウドコンピューティング能力を備えるようになる。
国家発展改革委員会が発表したデータによれば、今年4月末現在、全国に10ヶ所ある国家データセンタークラスターでは、25件のプロジェクトが着工し、データセンターの規模は標準ラック54万本に達し、計算力は毎秒1350京回を超えて、パーソナルコンピューター2700万台分の計算力にほぼ相当し、各方面で1900億元を超える投資を呼び込んだ。そのうち、西部地域への投資は前年同期の6倍増加し、第14次5カ年計画期間には、ビッグデータセンターへの投資が毎年20%を超えるペースで増加し、各方面の投資は累計3兆元を超えることが予想される。
大量の典型的応用シーンが生まれる
「東数西算」プロジェクトが全面スタートして、大量の典型的応用シーンが生まれた。
最近、貴州中雲データサービス有限公司が広東省深セン市にある瑞雲科技有限公司にクラウドストレージの支援を提供するようになった。瑞雲科技はテレビ・映画大型レンダリング業務を手がける企業で、戴開国ネットワークエンジニアによると、「これまでのシングルフレームレンダリングは作品1つに100時間以上もかかっていたが、貴州中雲のスーパー計算力のおかげで、1時間さらには数分に短縮できるようになった」という。
「流浪地球」、「長津湖」、「白蛇2:青蛇劫起」など多くの映画作品の後期レンダリングはいずれも貴州で行なわれた。貴州は世界で超大型データセンターが非常に多く集まる地域の1つになっており、域内総生産(GDP)に占めるデジタル経済の割合が34%に達する。今では「東数西算」プロジェクトの太鼓を打ち鳴らし、華為(ファーウェイ)、騰訊(テンセント)、中国移動(チャイナ・モバイル)などのデータセンターが続々と貴州に建設され、新しい応用シーンを次々に生み出している。
5月10日には、四川省成都市スマート計算センターが正式にリリースした。リリース初日、同センターでは業界のリーディングカンパニー12社が入居の契約を結び、計算力の利用率が90%を超え、リリースしてすぐにフル稼働が実現した。
同センターには人工知能(AI)計算力プラットフォーム、都市スマートブレインプラットフォーム、科学研究イノベーションプラットフォームが設置されている。同センターの建設を担当した企業の1つである智算雲騰(成都)科技有限公司の王富紅プロジェクトマネージャーは、「都市スマートブレインプラットフォームを例にすると、力強く大容量の計算力という土台に支えられて、今後は都市ガバナンスがより精密化するだろう。センターの計算力を土台として可能になった短時間のすぐ先の天気予報の基礎モジュールでは、分解能が1キロメートルまで上がり、局地的な大雨・落雷・竜巻などの天気は45分早く予報できるようになった」と述べた。
甘粛省蘭州新区にある甘粛国網クラウドデータセンターのマシンルームでは、1つ1つのデータがプラットフォームのサーバーから、国網情報通信産業集団有限公司の北京市、浙江省、江蘇省などにある研究開発プロジェクトチームに統一的に送られ、チームが国家電網新世代ECプラットフォーム(ECP2.0)や企業のマーケティング2.0などのシステム研究開発業務を遂行するようサポートする。
「東数西算」プロジェクトはたくさんの新しい応用シーンをもたらし、計算力消費の時代を切り開いた。中国科学院計算技術研究所の張雲泉研究員は、「『東数西算』プロジェクトの実施に伴って、今後は電気のコンセントのような『計算力のコンセント』が登場して、ユーザーは電力を使用してお金を払うのと同じように、いつでもどこでも、非常に便利に計算力サービスが買えるようになるだろう。将来は発電所のような『計算力工場』、電力網のような『計算力網』が登場して、ユーザーは携帯電話のデータ通信量のプランを買うように、計算力サービスのプランを買えるようになるだろう」と展望を語った。(出所:人民網日本語版)
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