公開中の作品から、文化部映画担当の編集委員がピックアップした「プレビュー」をお届けします。上映予定は予告なく変更される場合があります。最新の上映予定は各映画館にお問い合わせください。
「映画 太陽の子」先の大戦で旧海軍に委託されて京都帝大（現在の京都大学）が原爆の研究開発をしていた事実をヒントに描く人間ドラマ。
ＮＨＫ職員で放送中の大河ドラマ「青天を衝（つ）け」の演出を手がける黒崎博が脚本を書き、監督を務めた。
主人公の大学生、石村修に柳楽優弥（やぎら・ゆうや）。弟の陸軍下士官は三浦春馬（はるま）、兄弟の幼なじみに有村架純（ありむら・かすみ）いう布陣。
下地にあるのは戦時下の青春ドラマだが、おそらく大きな主題は科学の発展が人間にもたらすものはなにかという問い。昨年、終戦の日にＮＨＫでパイロット版を放送したが、この本編のほうが主題は明確か。
黒崎は、前半、１時間ほどを割いて「科学」を描く。中盤で「人間」を描き、最後は米国の科学に「負けて」焦土と化した広島で修にある人物と「科学と人間」について問答をさせる。結論は冷酷だ。いや、そこからさらに観客に問いかけたいのか？
修が約３分間、黙々と握り飯をほおばる場面も終盤の見どころ。日米合作。
６日から東京・ＴＯＨＯシネマズ日比谷、大阪・ＴＯＨＯシネマズ梅田などで全国上映。１時間５１分。（健）
昨年の松竹映画１００周年のため、監督の山田洋次が手がけた記念作だが、主演予定の志村けんさんが亡くなるなどコロナ禍に翻弄された。
映画撮影所を舞台に恋と挫折を描く。人情話のはずだが、コロナへの怒りが全編からわき立っているように思えるのは気のせいか。だが、時流を取り込むのは山田の常套（じょうとう）手段だ。舞台となる高度成長の頃の日本の初々しさも、コロナによる現代の疲弊ぶりを浮き上がらせる。
山田の通算８９作目。映画の神様という題名に、どのような思いを託したのか。沢田研二、菅田将暉（すだ・まさき）、永野芽郁（めい）らが出演。
６日から東京・新宿ピカデリー、大阪ステーションシティシネマなどで全国公開。２時間５分。（健）
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