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Saturday, June 5, 2021

94年の歴史に幕 なぜミズノの淀屋橋店に入ると「ワクワク」するのか - ITmedia

 1955年に公開された映画『ゴジラの逆襲』(東宝)を見たことがあるだろうか。水爆実験で目覚めたアンギュラスとゴジラが戦うわけだが、個人的に気になったのは場所である。

 大阪の淀屋橋でバトルが繰り広げられ、当時そこにあったビルや地下鉄などが次々に潰されていく。そして、注目は43分のシーンである。「ミズノの本社ビル」(当時、現在は淀屋橋店)が木っ端みじんに破壊されてしまうのだ。

ミズノの淀屋橋店が生まれ変わる

 本社ビルは、1927年に完成する。当時、大阪で7番目の高層ビル(8階建て)として生まれ、建物には「スポーツは美津濃だ」などと書かれた“ふんどし広告”が話題に。バブル時にはゴルフ人口が増えたこともあって、近くで働くサラリーマンが昼休みにお店に立ち寄って、ゴルフボールなどを買っていく姿がよく見られた。

ふんどし広告が話題に

 そんな淀屋橋のシンボルの一つともいえるビルが、94年の歴史に幕を閉じようとしている。ゴジラとアンギュラスの手によって破壊されるわけではなく、再開発事業に伴って、6月30日に閉店する。残念ながら一度は更地になってしまうが、4年後に再び復活する。2025年秋に完成予定のビルの中に、生まれ変わってオープンするそうだ。

当時、リヤカーを取り付けたオートバイで配送していた

 ところで、ミズノの本社ビルはどのような特徴があるのだろうか。「1927年に建てられた」と聞いて、歴史が好き&金融に詳しい人であれば、「まさか……」と思われたはず。この年、昭和の金融恐慌が起きていて、銀行で取り付け騒ぎが起きるほど、とにかく景気が悪かったのだ。そんなご時世にもかかわらず、でっかい建物をつくったので、周囲からは「ミズノさん、本当に大丈夫でっか?」と心配する声もあったそうだ。

エレベーターに注目

 建物の特徴はいくつかあるが、個人的には「エレベーター」と「大食堂」が気になっている。屋上にエレベーター室があって、その建物のデザインに目がいってしまう。ロマネクスデザイン様式になっていて、大きなブラインドアーチと3つの小窓が設置されているのだ。

ロマネスクデザイン様式の屋上エレベーター室。2階に機械があって、そこでメンテナンスを行っていた

 エレベーター室をパッと見ただけで、「これは歴史的価値がありそうだなあ」と感じるわけだが、ビル全体からはそのような雰囲気は漂ってこない。なぜか。94年前に建てられたものの、その後、増床を繰り返し、建物の顔ともいえる道路に面している部分は現代風なデザインになっているからだ。

 その昔、屋上はどのようなことに使われていたのだろうか。エレベーターを使って屋上まで行けることを考えると、何かここで行われていたのに違いない。ミズノの社史を担当している梁川明美さんに聞いたところ、「当時、地域の人などを招いてラジオ体操を行っていました。また、夏になるとビアガーデンを開くなど、多くの人に利用していただきました」とのこと。

1階南側と北側の扇状の階段

 ちなみに、このエレベーターは当時、「大阪で一番速い」と言われていたそうで。また、エレベーターガールが衣装をまとって、行先階まで案内していたそうだ。

ライスカレーが人気

 次に「ご飯」の話である。ビルが完成した6年後に、「大食堂」がオープンする。8階建てのビルを構えたものの、当時のミズノはスペースを持て余していて、7階と8階は空きフロアーになっていた。「このままにしていてはもったいない、何らかの形で有効活用すべき」と考えたのではないだろうか。創業者の水野利八は、梅田にある阪急百貨店で営業していたレストランに注目する。その店のカレーライスが人気だったことから、従業員に「阪急百貨店に行って、勉強してこい」と指示したそうだ。

7階、8階の大食堂。同窓会に使われたことも

 「レストランで修行を積んだのか。それとも、店で食べて味を研究したのか。その記録は残っていませんが、大食堂で『ライスカレー』を販売したところ、看板メニューの一つになりました」(梁川さん)

 飲み物で人気を集めたのは「ホームランジョッキ」である。「ホームラン」という言葉が入っているので、サイズが大きいのかなあと思っていたら、そうではない。一般的な優勝カップには取っ手が2つ付いているが、それをイメージしてジョッキの取っ手を2つにしたのだ。仕事を終えたサラリーマンが大食堂に集まって、「大阪タイガース、また勝ったで!」(1946年〜60年、現在は阪神タイガース)などと叫びながら、ホームランジョッキでビールをグイグイ飲んでいたのではないだろうか。

あえて「98尺8寸」に

 時は流れ、エレベーターガールはもういない。大食堂も姿を消してしまった。本社機能も1992年に移転(大阪市住之江区)したので、その後はたくさんある店舗の一つになってしまった。しかし、である。ビルの構造をよーく見ると、細部にわたって“こだわり”がたくさんあるのだ。

 例えば、1階の天井の高さである。店内に入ると、吹き抜け感を覚えるほど高い。また、階段を昇っていくと、ちょっとした踊り場があって、そこから1階を見渡せることができる。ここまで書いていて、ある建物の姿が浮かんできた。百貨店である。梅田の阪急百貨店や心斎橋の大丸にも階段があって、そこをトントントンと昇ると、1階を見渡せるスペースがあるのだ。

各フロアの天井

 エレベーターにはエレベーターガールがいて、家族で楽しめる大食堂があって、踊り場から1階を見渡せる……。そうなのだ。ミズノの本社は、百貨店の構造をオマージュしたかのような設計になっているのだ。だから、建物の中に入ると、どこかワクワクするような気持ちがわきあがってくるのかもしれない。

地上28階の超高層ビルに店舗を構える(完成予想パース)

 本社ビルを建てる際、創業者の水野には目標があった。それは、高さ100尺(約30メートル)のビルを建てること。しかし、実現しなかった。いや、それは違う。「個人的な責務を果たして安心してはいけない。はるかに大きな社会的な責任が残っている」と自戒の念を込めて、あえて「98尺8寸」にしたのだ。

 同社はその後、「カッターシャツ」「オーバーセーター」「ボストンバッグ」「オランダマフラー」などのネーミングを考案するなど、人気商品をたくさん世に出してきた。

 現在の本社ビルは31階建てで、高さは485尺(147メートル)である。

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