毎年この時期になると、インターネット上などで「『単位をください!』と教授に頼み込みに行った」「単位が取れないと卒業が…」といった大学生からの投稿が見られます。筆者は一応、大学の教員なので、今回は大学のこの「単位」のことを書こうと思います。もし、担当の教授や准教授がなかなか単位をくれないとしたら、それは決して意地悪でやっているわけではないし、独断でもないということも説明しようと思いますが、それ以前にそもそも、「単位」が何なのかが意外と知られていません。 また、「単位とはこういうもの」という公の文言は昔からあまり変わっていないのですが、実際の扱いは筆者が大学生だった20世紀終わりごろ(1990年代~2000年代初め)と比べると随分と変わってきています。はるか昔に大学生だった人も現役大学生も、そして、大学に子どもを通わせる親御さんも単位について改めて整理してみると「へー、なるほど」と思う話があるかもしれません。
出席や遅刻の回数は文科省が基準
現在は週休2日が当たり前になりましたが、その昔のサラリーマンは「月~金+土曜半ドン(半日が休み)」という労働時間が一般的でした。つまり、8時間×5+半日なので、ざっと45時間になります。大学の単位はこの「フルタイムの人の1週間分の労働」を基準に決まったとされます。つまり、丸々1週間、しっかり勉強に打ち込むと得られる知識と学力が「1単位」と決められたということです。 大学の授業は通常、1コマ90分、半期の授業は15回です。大学の授業の形態はさまざまですが、講義タイプの授業では、この半期15回の授業に2単位を出すのが一般的です。ここで計算が得意な人は「あれ?」と思ったのではないでしょうか。1単位は45時間なので2単位は90時間です。しかし、1回90分の授業を15回受けても22時間半にしかならず、67時間半も時間が足りません。つまり、本来は授業1回あたり、予習と復習を4時間半ほどしなければ単位はもらえない計算になるのです。 この基準はどこかの大学や教授が勝手に決めているものではなく、文部科学省の基準です。大学卒業には124単位が必要ですから、124週間、一生懸命働いたのと同じくらいの努力をして勉強したら、「学士」の学位を与えましょうということになっているのです。 しかし、20世紀に大学生だった読者の中には驚く人もいるかもしれません。「最終回の課題だけ聞きに行って、適当にリポート書いて出したら単位取れたよ」なんて経験をした人はザラにいるのではないでしょうか。この場合の学習時間は多めに見積もっても10時間未満でしょう。 このような状況は学生個人にとっては「楽して単位が取れて卒業できてラッキー」なのかもしれませんが、あまりよいこととはいえません。楽した分、「力」はついていないわけですから、学費を出す親だけでなく、彼らを採用して国際競争しなければならない企業にとっても、彼らから税金を取ろうとする社会にとっても困った話です。 そんなわけで、21世紀になってから、この辺りが徐々に厳しくなり始めます。筆者も「楽勝科目にしちゃダメ、勉強していない学生から泣きつかれても単位出しちゃダメ、休講したらその分補講しなきゃダメ、授業時間はちゃんと90分確保しなきゃダメ」という趣旨の通達を何度も読んだ記憶があります。学生がどの授業を受けるのかを選ぶための「シラバス」と呼ばれる文書にも、各授業1回4時間半必要なはずの予習復習で何をやればよいかを書くことが求められるようになりました。 筆者の授業はもともと、楽勝な科目ではなかったし、15回きっちり授業をしていたので、通達があっても特に中身や評価法は変えませんでしたが、このような通達を受けるようになってからは、この記事に書いたようなことを授業の最初に話すようにしました。また、出席や遅刻の回数にも文科省が決めた厳密なルールがあるので、定量的な基準を満たしていない場合、どんなに泣きつかれても筆者の権限ではどうすることもできないことも初回に伝えるようにしました。 そのおかげで、出席していないくせに「就職決まってるんで単位なんとかしてください~」みたいなことを言われるのはまれですが、ネット上の大学の先生のぼやきを見ていると、今でもそういう学生はそれなりにいるように見えます。
からの記事と詳細 ( 大学の「単位」とは何か 1単位の決め方、学士=卒業に必要な努力量は?(オトナンサー) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース )
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