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Thursday, May 28, 2020

何かを成すのに必要な「4つのP」【出口治明『「教える」ということ』特別対談:試し読み⑨】 | 「対談(本・小説)」一覧 | 「特集(本・小説)」 - カドブン

出口治明さん(立命館アジア太平洋大学<APU>学長)が「教える」「教育」の本質について考察した最新刊『「教える」ということ』。本の中には、各界の専門家との対談が収録されています。今回は立命館慶祥高等学校校長・久野信之先生との対談を試し読みしてみましょう。

「これからの学力養成」を目指すアクティブラーニングに注力している北海道・江別市の立命館慶祥中学校・高等学校。海外研修旅行は、生徒自身の考えと問題意識の観点からコースを選択できるなどユニークな取り組みで注目されています。
「アクティブラーニングは、『教わる』のではなく『自ら学んでいく姿勢』が基本だ」と話す校長の久野信之氏と「教える」ということについて議論します【第3回目】。

>>【第1回】「世界に通用する18歳」をどう育てるか
>>【第2回】大人は「広い世界を見せること」くらいしかできない

教育の目的は、「生きる武器を与え、考える力を養う」こと


出口:久野校長は、もともと、何の教科を教えておられたのですか?


久野:私は札幌市内の高校で生物の教師をしていました。ヤンチャな子どもたちがいっぱいいる高校で立命館とはまったく違いますけど(笑)、すごく楽しかったですね。


出口:当時は、どんな先生になろうと思っていたのですか?


久野:進学校ではなかったですし、ヤンチャ揃いでしたから、教科書の知識をそのまま教えるより、人生の役に立つことを教えたほうがいいと思っていました。


出口:たとえば、どういうことですか?


久野:たとえば、ガールフレンドの選び方(笑)。減数分裂をテーマにしながら、「多くの遺伝というのは、男女ともに、母方から来るX遺伝子の影響を受ける。だからガールフレンドを選ぶときは……」とか(笑)。


出口:それはとっても役に立ちますね(笑)。

 僕自身は、子どもに教えることは2つしかないと思っています。

 ひとつは、久野校長がいわれたように、人生の役に立つこと。具体的には、お金の使い方とか、増やし方とか、選挙での投票のしかたとか、税金の考え方とか、社会保障とか、いわば「生きるための武器」を教えることです。

 それからもうひとつが、どこでもいつでも、自分の頭で考え、自分の言葉で自分の意見をいえるように育てることです。考える力(ロジカルシンキング)といってもいいと思いますが、要するに教育の目的は、「生きる武器を与えること」と「考える力を養うこと」の2つしかないと思っています。



人生にも仕事にも、遊び心が必要


久野:子どもたちがワクワク、ドキドキしなければ、勉強は続きませんから、人生を楽しんだり、感動したりする力も大切ですよね。人生を楽しむ力がなかったら、家族を幸せにすることも、自分を幸せにすることもできません。

 たとえば、スポーツや芸術をいくら教えたところで、全員がウサイン・ボルトになれるわけでも、ピカソになれるわけでもない。ですが、ウサイン・ボルトの走りに感動したり、ピカソの作品を見て涙が出るほど感動することは誰にだってできるはずです。


出口:たしかに、感動できる能力や楽しめる能力は大事ですよね。

 人はそれぞれ能力も才能も違うのですから、「自分の好きなことをやってご飯が食べられる社会が理想だ」と僕は仮置きしています。

 でも、好きなことをやっていても苦労はある。うまくいったり、うまくいかなかったりする中で、すべてを楽しむ力を持つことができれば、素晴らしい人生をおくることができる気がします。

 久野校長ご自身も、人生を楽しんでいらっしゃいますよね。

 僕は、立命館慶祥を「立命館の宝」と呼んでいるのですが、文武両道で、尖った生徒がどんどん生まれています。こうした進学校の校長というと、二宮尊徳のようなイメージがあるじゃないですか。でも久野校長はまったくそうではない(笑)。

 これは僕の持論ですが、24時間365日、教育のことばかりを考えている人は、立派な教育者にはなれないと思います。なぜなら、行き詰まってしまうからです。ゴールドマン・サックスのCEOのデービッド・ソロモンは、プロのDJなんですよ。日本の企業の社長の中には、「俺は24時間仕事のことしか考えていない」という人もいて、それをみんなが立派だと褒めますよね。でも、脳科学的に考えたら、24時間仕事のことを考え続けていたら、行き詰まるに決まっているのです。

 何事かを成すには4つのPが必要だといわれています。目的(purpose)、情熱あるいはやる気(passion)、それと仲間(peer)です。この3つでやれそうだと思う人が多いのですが、もうひとつのPが決定的に重要です。それは、遊び心(play)です。

人生を楽しんでいなければ、いい知恵は出ません。立命館慶祥が非常にクリエイティブなのは、久野校長の中に、人生を楽しもうという考えが根付いているからだと思います。

出口治明『「教える」ということ 日本を救う、[尖った人]を増やすには』詳細はこちら
https://www.kadokawa.co.jp/product/321906000004/(KADOKAWAオフィシャルページ)


出口 治明(でぐち・はるあき)

立命館アジア太平洋大学(APU)学長。ライフネット生命創業者。

久野 信之(くの・のぶゆき)

札幌市出身、1960年生まれ。慶祥学園教諭、立命館慶祥高等学校教諭、立命館慶祥中学校・高等学校教頭(2008年)、同副校長(12年)を経て、2015年4月に校長に就任。同校は「世界に通用する18歳」を掲げ、グローバル人材の育成を目標とした取り組みを行っている。2020年4月から学校法人立命館常務理事(一貫教育担当)。

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May 28, 2020 at 08:07PM
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