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Saturday, July 17, 2021

そもそも植物とは何か フロランス・ビュルガ著 河出書房新社 2585円 : 書評 : 本よみうり堂 : エンタメ・文化 : ニュース - 読売新聞

 哲学者としての著者の問いは、植物に対する擬人化の 趨勢すうせい に向けられている。それは、植物も知性を有しているとか、植物も苦痛を感じるといったものだ。その帰結は、「生物はみな同じように苦しい思いをする。なのに人間や動物は守られて、植物だけがなおざりにされるのはおかしい」となり、さらには、「何を捕食しても倫理上は間違っていない」という主張となる。要するに、菜食主義者であっても植物を食べる限り、動物を食べることと何も変わらないのだから、肉食は倫理的に とが められない、ということだ。

 そこで、著者はなんとしてでも動物と植物の間に線を引き直そうとする。植物には知性も感覚もなく、「意識がある生命」からは除外される。それは、「個体性がなく、不死であり、経験をしない存在」だからだ。無論、著者は植物には何の価値もないと言っているわけではない。植物の存在感や繁栄力、装飾の独創性、穏やかさ、寡黙さを心から賛美してはいる。

 「植物とは何か」。植物学者ではなく、哲学者としてこの問いを問うとき、著者は動物と植物の間に明確な線を引き直すことで、動物を殺して食べる肉食を擁護する論理を徹底的に批判する思想闘争を行なっているのだ。

 著者はさらに、この擬人化の延長線上にある、植物に権利を認めて、自然保護や環境保護の根拠にする考え方も「罪深く」と一刀両断にする。なぜなら、「自然保護には、動物に対する最低でも『軽視』、最高だと『 軽蔑けいべつ 』がつねに伴う」からだ。自然に「人格」を与えることは、しばしば、個体としての動物への無関心を伴う。

 それでも、動物と植物の両者をともに尊重する理路はないものかとも考えさせられる。人間と動物の間に引かれた線が人間の中に引かれると、権利と尊厳を 剥奪はくだつ される人間が登場するように、植物との間に引かれた線もまた人間に折り返される危険がたえずあるからだ。思考を深く揺さぶられる一書である。田中裕子訳。

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